菅義偉前首相、神奈川の県立校で3年生対象に講演 参院選公示直前の6月 識者「教育基本法に反する恐れ」

菅義偉前首相(資料写真)

 参院選の日程として6月22日公示、7月10日投開票が有力視される中、神奈川県立瀬谷西高校(横浜市瀬谷区)が公示直前の6月13日に自民党の菅義偉前首相(衆院神奈川2区)を招き、3年生を対象に政治参加についての講演会を開催することが分かった。識者は「国政選挙を控えた時期に特定政党の政治家だけを招くことは問題」と指摘している。

 県教育委員会と同校が5月31日発表した。同校が主権者教育を含むシチズンシップ教育に力を入れていることから企画し、来年4月に瀬谷高校と統合することに伴う記念事業の一環。地域で植栽活動に取り組んでおり、2027年に上瀬谷通信施設跡地で開催される「国際園芸博覧会」が講演テーマの一つとして予定されている。菅前首相は自民党の同博覧会推進特命委で特別顧問を務める。講演会開催は県議が仲介したという。

 教育基本法第14条は特定の政党を支持・反対する政治教育を禁じている。3年生約280人には参院選の選挙権がある生徒もいる可能性があるが、同校は「前首相の考えを支持したりするのではなく、政治参加を促進させる目的」と説明。7月19日の学習発表会に向けた企画の一つとして5月上旬までに日程を組んだといい、公示直前を狙った意図は全くないという。

 名古屋大の中嶋哲彦名誉教授(教育行政学)は、公示直前に特定の政治家を招いた講演会を高校で開くことについて「菅氏にとって肯定的なことが中心に語られることが想定される。支持する意図がないとしても結果としてそういう効果をもたらしかねず、教育基本法14条に反する恐れがある」と問題視。「主権者教育に取り組んできたなら、なおさらこの時期に政治的中立が疑われる行為は避けるはず。学校側の軽率な行為が、生徒を傷つけることにならないか」と危惧した。

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