ESG評価・データの信頼性を確保する 金融庁が専門分科会で報告取りまとめへ

金融庁は、サステナブルファイナンス有識者会議にESG評価・データ提供機関等に係る専門分科会を設け、ESGに関する評価およびデータを提供する際の行動規範等について議論を開始した。検討会では、Moody’sや日本格付研究所など評価機関を中心に、被評価企業や資産運用会社から意見を求めた。4月11日には第5回目の会議を開催し、報告の取りまとめについての方向が整理された。同分科会の設置は、2021年6月にまとめられた有識者会議報告書内で、企業と投資家の橋渡し役を担うESG評価・データ提供機関の役割が重要視されたことによる。分科会報告は、IOSCOの最終報告書「ESG格付け及びデータ提供者」を基礎としつつ、社会の持続的な成長を支えるファイナンス推進という観点から、インベストメントチェーン全体を捉えてまとめられる見込み。

金融庁によれば、投資判断等にも重要な要素となるESG評価およびデータについては、提供機関に期待される行動規範に留まらず、評価機関のデータを利用する投資家や、評価の対象となる企業に期待される事項も含めた、相互関連的なシステムの中で善処していく。
先に公表されたサステナブル有識者会議報告書では、ESG評価とデータに関して4つの課題が指摘された。第1は透明性と公平性に関する課題で、評価・データ提供機関によって基準・手法が異なるなか、詳細や設定の意図等が開示されていなければ、評価結果を正しく読み解けないということ。第2はガバナンスと中立性の問題で、企業に対してESG評価を行う一方、同じ企業に対して有償でコンサルティングサービスを提供するなど、利益相反が懸念されるケースがあること。第3は、急速に広がる評価需要に対して適切な人材登用に問題が生じていること。第4は、多くの評価機関から確認作業を求められるなど企業の負担が大きいことが挙げられた。
以上について分科会では、透明性と公平性の問題は、評価結果がバラバラな状況は問題ではなく、当該評価の目的・考え方・方法論などを明らかにすることが重要との意見が述べられた。根本的にESGという概念自体が多様であるため、評価の多様性を統一するのではなく、評価の根拠に関して透明性を高める方針と見られる。ガバナンスと中立性では、会社としての独立性およびアナリストの独立性、双方に目配りが必要なことが確認された。人材登用については、ESGへの取組みの急拡大に対応するため、評価機関が外部機関との連携可能性を探る必要を提起した。企業の負担については、ESGデータは社会インフラの1つとも言え、制度上の整備を図るとともに、企業側にも情報提供に関して何らかのベネフィットが必要ではないかという意見も出された。
今後についての議論では、企業開示の充実に伴い、評価機関はデータ収集機能から、非公開情報も含めた分析機能へ価値が移行する可能性を指摘。標準化が進む面と付加価値が増す面の両者に配慮した行動規範策定を求めた。また近年、プロジェクト(債権)評価と企業体(株式)評価が近接してきており、サステナブルファイナンスはそれらをつなぐ役割を持ち得るといった展望も語られた。

2022/5/5・15 不動産経済ファンドレビュー

不動産経済ファンドレビュー

© 不動産経済研究所