新生児難病血液検査で陽性初確認 脊髄性筋萎縮症、早期治療につなげる 栃木県保健衛生事業団など4月から実施

脊髄性筋萎縮症の治療を終え、母親に抱かれる女児=1日午後、下野市薬師寺

 栃木県保健衛生事業団などが4月から始めた難病「脊髄性筋萎縮症(SMA)」を見つける新生児向けの血液検査で、壬生町の女児が初めて陽性と判断されたことが1日までに分かった。SMAは遺伝子異常で運動能力が衰える病気で、同日、神経細胞を維持する治療を受けた。家族は「早く治療につながりほっとした」と振り返る。来年度以降は検査に自己負担が必要となる見通しで、関係者は公費支援の必要性を訴えている。

 SMAは生まれつき遺伝子の一部が欠け、徐々に運動神経細胞の機能が低下する難病。最も症状が重い「I型」は、生後半年以内に発症して寝たきりとなり、人工呼吸器が必要となる。2万人に1人と推定され、本県では1~2年に1人が生まれる可能性がある。

 初めてSMAの陽性が分かった女児は5月上旬に生まれ、生後数日に採取した血液から判明した。母親(39)は「大きな病気で、治療できるか不安だった」と語った。

 SMAは近年、薬による遺伝子治療で歩けるようになるなど、運動機能の回復が確認されている。発達の遅れなどから発症を疑うが、投薬が遅れれば維持できる神経細胞が減り、治療効果が下がる。

 自治医大とちぎ子ども医療センター(栃木県下野市薬師寺)の山形崇倫(やまがたたかのり)センター長は「失われた神経細胞は戻らず、早期治療が重要」と指摘。母親は「検査がなければ気付けなかった自分を責めたかもしれない。歩けるようになる可能性が大きく見えた」と話す。

 県は、生まれつきの代謝やホルモンの異常を調べる「先天性代謝異常等検査」を県保健衛生事業団に委託し、20疾患を公費で検査する。しかしSMAは対象外で、本年度は同事業団と自治医大、獨協医大、済生会宇都宮病院による研究事業として実施している。

 年1万人程度の県内の全新生児が対象で4月以降、希望があった約1300人が受けた。全産科施設で無料で受けられるが、23年度以降は支援がないと数千円の自己負担が必要という。

 研究事業に協力する県産婦人科医会の木内敦夫(きうちあつお)会長は「県内でも早期発見につながったことは意義がある」とし、今後の公費による援助を訴えた。

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