自主防災会 再編率44% 進む再構築 「自分たちの町は自分たちで守る」 未来へ 災害に備える島原半島・下

白山地区自主防災会の避難所運営訓練で段ボールベッドを組み立てる関係者ら=島原市立第三小体育館

 43人が犠牲になった1991年6月3日の雲仙・普賢岳噴火災害を経験した長崎県島原市。災害への備えを怠らず、火山との共生を目指し、地域防災組織「自主防災会」の再構築が進む。
 市南東部の白山地区。噴火災害の直接的な被害はなかったが、高潮被害にたびたび見舞われ、昨年、自主防災会が再び動き出した。
 5月29日、噴火災害当時、被災者の避難所だった市立第三小(広馬場町)の体育館。約70人が参加し、避難所の運営訓練を実施した。「お客さまではだめ。自分たちで考え動き、避難することが求められる」。荒木修会長(69)は、行政に頼らない住民主体の活動の意義を説いた。

■終息で形骸化

 自主防災会は大火砕流翌年の92年から93年にかけ、旧島原市の全186町内会に設立。96年に噴火災害が終息すると、専任が大半だった会長を町内会長が兼務するようになり、活動が形骸化。市は2019年以降、消防退職者など実務経験者らを専任代表に据え、再構築に乗り出した。
 背景には近年、全国で頻発する災害への危機感に加え、住民の高齢化と市職員の減少といった長年の課題が横たわる。市によると4月現在、65歳以上の高齢化率は36.07%。大火砕流前の1991年3月と比べ約20ポイントも増えた。市職員は約350人で、約30年間で約100人減少。避難に支援が必要な人が増えるにもかかわらず、災害対応にあたる市職員の不足が現実に迫っている。
 自主防災会の再構築から3年近く。市市民安全課によると、7地区224町内会・自治会のうち、先陣を切った安中、白山、霊丘各地区の計100町内会で完了し、再編率は44.6%に上る。「公的救助を当てにできない大規模災害時、避難は住民主体が前提。互いの協力が不可欠」。NPO法人日本防災士会県支部の旭芳郎支部長(68)は、この取り組みを評価する。

■顔見える関係

 島原半島3市に目を向けると、自主防災会の組織率は極めて高い。本県の74.8%(昨年10月現在)に対し、島原、雲仙両市は100%、南島原市も95.5%。噴火災害などを機に組織化が進んだとみられる。
 3市は2018年、防災担当者による調整会議を発足させ、実務者同士の“顔が見える関係”を築く。島原、南島原両市はそれぞれ配備する防災カメラの映像を共有。雲仙市も今後、導入する方針で、いざという時の情報共有に役立てる。
 5月25日に自主防災会を再び編成した霊丘地区。「“先輩”の2団体とともに住民の力を合わせたい。自分たちの町は自分たちで守る」。隈部政博会長(79)は決意を新たにした。民間と行政、行政と行政の連携を通して、島原の備えは次のステップへ踏み出そうとしている。


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