BTCホンダのジョシュ・クック、得意の地でポールから2戦連続の連勝劇。選手権首位に浮上/BTCC第3戦

 5月28~29日にイングランド随一の高速トラック、スラクストンで争われたBTCCイギリス・ツーリングカー選手権第3戦は、雨絡みの前戦ブランズハッチ・インディで連勝を飾っているジョシュ・クック(リッチエナジーBTCレーシング/FK8型ホンダ・シビック・タイプR)が、予選ポールポジションから2戦連続の連勝劇を決め、新たな選手権リーダーに浮上。得意なトラックで通算9勝目とBTCC新記録を樹立した。さらに最終ヒートのレース3ではアダム・モーガン(カーガッツ・ウィズ・シシリー・モータースポーツ/BMW 330e Mスポーツ)が今季初勝利を飾り、2022年共通ハイブリッド搭載の新時代はホンダ vs BMWの攻防が続いている。

 今季よりコスワース・エレクトロニクス社製のTOCA Hybrid systemが組み込まれ、従来のサクセスバラストに代わるエレクトリック・パワー“使用秒数制限”を加えることで、スポーティング面でのハンデ制度も担うNGTC規定ツーリングカーの争いは、オフテストも実施された同国南岸ハンプシャー州のトラックで第3戦を迎えた。

 そのFP1では“ブラック&グラファイト”のカラーリングとなったBTCホンダのクックが最速をマークし、続くFP2は開幕ポールシッターのジェイク・ヒル(MBモータースポーツ・パワード・バイ・ロキット/BMW 330e Mスポーツ)がトップに立つなど、ハイブリッド時代の序盤戦を牽引する顔ぶれとなった。

 続く予選ではそのクックが得意コースで躍動し、1分15秒310の最速タイムを記録。今季ここまで2戦でフロントロウを確保し続けてきたヒルを0.077秒差で降し、ハイブリッド搭載車で初の最前列を獲得した。

「ここではどうクルマを走らせたらうまくいくかを知っているからね。予選で強みになると分かっていたし、ポールが獲れてうれしい」と、開幕のヒルに続いて第2戦は4冠王者コリン・ターキントン(チームBMW/BMW 330e Mスポーツ)と、2戦連続でBMWに奪われていたグリッド最上位を得た。

「早い段階ではハイブッド使用制限があったから厳しかったし、予選では少しバランスが変化したから大変だった。セッション途中でいくつかの変更を加え、こうしてポールを獲得できたし、本当にやりがいのある仕事だったよ」

 この時点で、クックが明日のレース1でのポールを勝利に変えた場合、かつてのファブリツィオ・ジョバナルディやイヴァン・ミューラー、そしてゴードン・シェドンらを抜いてBTCC史上スラクストン最多勝記録を更新する可能性が出ており、クック自身も「そうするつもりだ」との意気込みを語った。

「もちろん、レコードを手に入れるのはいいことだし、もし僕が明日のトラックに出て勝つことができれば、そうするつもりだ。でも焦点はチャンピオンシップにあり、獲得可能なポイントを最大化することが重要なんだ」

BMWの連続ポールポジション獲得記録を止め、予選最速をマークしたジョシュ・クック(Rich Energy BTC Racing/FK8型ホンダ・シビック・タイプR)
第3戦を前に選手権首位に立っていたトム・イングラム(Bristol Street Motors with Excelr8 TradePriceCars.com/ヒョンデi30 Fastback N Performance)はレース1でトップ10を逃す
王者アシュリー・サットン(NAPA Racing UK/フォード・フォーカスST)は3戦連続3位表彰台を獲得

■連勝のクック「とても達成感があるよ」

 明けた日曜レース1はスタートこそ隣に並んだFRのBMWに蹴り出しでわずかに先行され、ヒルがターン1でホールショットを奪ったものの、複合セクションのアウト側から回り込んだクックがポジションを奪還してコントロールラインに戻ってくる。

 背後ではダニエル・ロウボトム(ハルフォーズ・レーシング・ウィズ・カタクリーン/FK8型ホンダ・シビック・タイプR)に対し、オーバーテイクを仕掛けた新生モーターベース・パフォーマンスから参戦のダン・カミッシュ(NAPAレーシングUK/フォード・フォーカスST)が弾き出されグラスエリアへ。この直後を走行していた、ポイントリーダーのトム・イングラム(ブリストル・ストリート・モータース・ウィズ・エクセラー8・トレードプライスカーズ.com/ヒョンデi30ファストバック Nパフォーマンス)も、アクシデントを避けようと回避行動を強いられる。

 ここから前の2台は3番手の王者アシュリー・サットン(NAPAレーシングUK/フォード・フォーカスST)をみるみる引き離し、クックは0.9秒のマージンでポール・トゥ・ウインを達成。2位ヒル、3位サットンの表彰台となった。

 続くレース2もポール発進のクックがヒルに先行を許すと、そのままWSR製BMWのテールに張り付いたBTCホンダが、今度は最終シケインでパッシングに成功し、首位に復帰。そのまま前ヒートを再現するかのように16周後のフィニッシュを迎え、クックは記録をさらに伸ばす同地9勝目を獲得。ポディウム上には同一メンバーが並んだ。

 そして週末最終のレース3は、リバースグリッド最前列から出たモーガンのBMWが、クックの僚友であるジェイソン・プラト(リッチエナジーBTCレーシング/FK8型ホンダ・シビック・タイプR)をトラクション勝負で仕留めると、今度は前2ヒートとは逆の展開で“悪童”を制圧。2番手にターキントンが続いてBMWがワン・ツーを飾り、王者サットンが意地の3戦連続3位表彰台を手にした。

「すべての勝利は特別だし、そのなかで『ダブル』を獲得することは非常に難しく、とても達成感があるよ」と、最終ヒートでも5位入賞で貴重な選手権ポイントを重ねたクック。

「それもブランズハッチとここで2週連続だなんて、信じられないほどの偉業だ。チームがどのようにクルマを開発したか、そして僕がパッケージ全体でどのように“融合”しているかを示せたね」

 これで獲得ポイントを139点としてランキング首位に浮上したクックは、116点の2位サットン、112点の3位ターキントンと、王者経験者たちを大きく引き離すことに成功。続くBTCC第4戦は6月11~12日にオールトンパークで争われる。

レース1、レース2ともに同じ顔ぶれの並ぶ表彰台に。WSRとのジョイントチームから参戦するジェイク・ヒル(MB Motorsport powered by ROKiT/BMW 330e M-Sport/右)も好調を維持する
レース3リバースポールのジェイソン・プラト(Rich Energy BTC Racing/FK8型ホンダ・シビック・タイプR)はスロースタートで後続に飲み込まれる
そのレース3はアダム・モーガン(Car Gods with Ciceley Motorsport/BMW 330e M-Sport)が今季初勝利を飾っている

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