梅の収穫へ援農者紹介 みなべの法人、人手不足解消へ一役

農家(左)に援農者(中央)を紹介する山下丈太さん=和歌山県みなべ町東岩代で

 梅の収穫期を迎え、和歌山県みなべ町清川の会社が今季も農家に援農者を紹介する事業をしている。3年目となる今季の紹介数は1日現在、予約も含め24戸に計52人で、これまでで最多。農業における人手不足を反映している。

 農業の担い手不足は深刻で、同時に収穫期など一定期間に集中して必要な人手の確保も課題となっている。農家は知人や親類に頼むことが多いが、高齢化で引き受けてもらえないケースが出ており、ハローワークや新聞広告で探すなどしているが、確保は年々難しくなっている。行政も農業関係団体などと連携し、県外から援農者を受け入れる計画をしているが、新型コロナウイルスの影響で順調に進んでいない。

 この課題を少しでも解消しようと取り組むのが、山下丈太さん(40)が経営する「アグリナジカン」。山下さんは2020年5月に京都府和束町から清川に移住し、その年の紹介数は3戸に計7人だったが、21年には15戸に計25人まで増えた。さらに今季は人数では2倍以上になっている。当初は清川や岩代地域だけだったが、町内全域に広がり、日高川町からも依頼がくるようになった。口コミで広がっているという。

 農家が援農者を受け入れるのに課題となるのが期間中に泊まる場所。山下さんが自宅の離れを提供しているが、泊まってもらえる人数が限られているため、ほとんどが農家が用意しており、確保に苦労してきた。今年になって空き家を貸してくれる人が増え、梅加工会社も外国人雇用者向け寮の部屋を貸してくれるようになった。ゲストハウスも利用するなど充実しつつあり、紹介数が増えた要因にもなっているという。

 山下さんは「農繁期の人手不足は深刻で、とりわけ収穫期に苦労する農家は多い。採れないことに悩んで眠れないという農家の話を聞いたこともあり、農家の期待に応えたいと思っている」と話す。泊まる場所については「空き家の改修に補助するなど行政の支援があればもっと充実するのではないか」と語る。

 山下さんは、みなべ町や近隣市町だけでなく、京都府や山口県など全国の農家にも援農者を紹介している。援農者はインターネットを使って登録してもらっており、農家からの依頼だけでなく、援農者の登録も年々増えている。「田舎暮らしに興味があり、農業を手伝いたいという人は結構いる」と農家と援農者の橋渡しに手応えを感じている。

■「梅の魅力発信もしたい」 東大阪の女性

 大阪府東大阪市の鳥居由佳さん(39)は3日から約2週間、みなべ町東岩代の梅畑で収穫を手伝う。田舎暮らしが好きで、これまで全国各地の過疎地を巡り、今春まで約9年間は奈良県川上村に滞在し、林業関係の手伝いをしてきた。農作業は初めてだというが「収穫作業だけでなく、梅の魅力発信もしたい。地域の役に立つことができればと思う」と力を込める。

 受け入れる有本雄紀さん(24)は、これまで来てもらっていた美浜町の夫婦や友人、親戚にも手伝ってもらうが、どうしても足りず山下さんに紹介してもらうことにした。「地元ではなかなか確保できなくなっているので、こういった取り組みはありがたい」と話している。

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