【検証】テントが加水分解しちゃった!『POLON-T』でべたつきを除去して完全復活を目指すとあるキャンパーの体験記

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購入から4年が過ぎた我が家愛用のDODのテント『タケノコテント』。なんと気付けばフロアがベタベタに。『加水分解』を起こしてしまっていました……! お気に入りで愛着がありすぎるタケノコテントを、どうにかして復活させるべく、情報収集から『POLON-T(ポロン-T)』加工までをレポートします!

筆者ファミリーが愛してやまないタケノコテントが『加水分解』!我が家のキャンプライフが最大の危機を迎える

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出産などで空いた期間はあるものの、初めてテントを購入してキャンプに行ってから15年くらい経つ筆者。

テントは何度か買い替えましたが、ここに来て初めて、愛用中のテントが『加水分解』を起こしてしまいました

『加水分解』を起こしてしまったテントは、DODの初代タケノコテント。

我が家のお気に入りテントで、特に子供たちが大好きなタケノコテント。しっかりお手入れをして保管していたつもりなのに、フロアがベタベタになってしまって、設営するにも生地が張り付いてしまい手間取るし、フロアを歩くにも足にくっついてしまい不快……。

もう寿命なのかなと引退させることも考えました。

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しかし、約8.6畳もの広さのあるタケノコテントは、圧迫感がなく、快適にキャンプを過ごすことができる素晴らしいテントなんです。

就寝スペースとリビングスペースがワンフロアにレイアウトできるので、冬の寒い時期や雨キャンプの際にはキッチンを中に入れ込んでお籠りキャンプができたり、テントの中でプロジェクターを使って映画を見たり……。

非常に使い勝手がよく、引退させるのには惜しすぎるテント。しかも今販売されている後継のタケノコテント2は、その人気からなかなか入荷がない上に、抽選販売!

ということで、『加水分解』してしまったフロアシートを、なんとかして修復してみよう!と考えました。

「テントがべたつく!」 そもそも『加水分解』って何?

『加水分解』とは、水分が加わることで元の物質が分解してしまう化学反応のことを言います。この場合の「水分」は空気中の湿気も含まれますので、生活する上で「加水分解」が起きる可能性が避けられないといって良いでしょう。

『加水分解』を起こしやすい素材は、ゴムウレタンやポリウレタン樹脂。スニーカーのソールがひび割れてボロボロになったり、消しゴムなどが黄ばんでベタベタになったりする症状が代表例です。

テントの場合は、ポリウレタンが使用されている箇所が『加水分解』を起こしてしまうんです。

テントでポリウレタンが使用されているのは、PUコーティングの部分。PUコーティングは最もスタンダードなテントの防水加工のコーティング法なので、ポリエステル素材のテントのほとんどに施されている加工になります。

ということは、ほとんどのポリエステル素材のテントに『加水分解』の可能性があるということですね。

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加水分解が進んでしまったタケノコテントのフロアシートは、ベタベタによりシート同士がべったりくっついてしまい、なかなか剥がれません。

こうなってしまうと、使用に支障が出てきてしまいます。

『加水分解』は不可避な現象だけれど、予防することはできる

『加水分解』は、簡単に言ってしまうと経年劣化のひとつ。空気中の湿気でも起こりうる反応なので、絶対に加水分解させない方法なんてものはないようです。

しかし、加水分解が起こることを予防し、加水分解が起こるのを遅らせることはできます

予防方法はテントのメンテナンスの基本になりますが、紹介しましょう。

テントの加水分解予防方法①:テントを収納するときはしっかり乾かす

雨キャンプの時はもちろん、雨が降らなくても地面からの湿気や結露でテントは濡れています

特に、フロアの裏やスカート部分。2ルームテントのリビングスペースなど、結露してしまうことが多いんです。

撤収前にしっかり乾燥できればいいのですが、乾燥が甘かった場合は帰宅後でもしっかり乾燥させてから収納しましょう。PUコーティングは塩素にも弱いので、汚れは拭き取り、水道水で洗うことはできるだけ避けましょう。

テントの加水分解予防方法②:直射日光で乾燥させない

PUコーティングは紫外線の影響も受けるようなので、テントを干すときは陰干しが一番良い方法です。車庫やガレージなどでしっかり乾かしてあげることがベストです。

ただ、大きな幕となると陰干しできるほど広いスペースは取れないことが多いと思います。大きなテントを干すのが難しい場合も、風通しの良い場所で、できるだけ短時間で乾燥させるように気を付けてください

テントの加水分解予防方法③:湿気の少ない場所で保管する

テントは、直射日光の当たらない風通しの良い場所で保管しましょう

長期間使用しないときは、収納バッグのファスナーを開けて、出来るだけ外気に触れさせることも良いようです。

大型の湿気取り剤を置くなど、湿気がこもらないように工夫しましょう。

『加水分解』してしまったテントは修理不可!

筆者撮影加水分解により、変色を起こしてしまったタケノコテント

PUコーティングが劣化して『加水分解』が起こってしまったら、もう劣化を止めることはできないし、テントメーカーでも修理は不可です。

『加水分解』が起きるということは購入からそれなりの期間が経過しているということなので、テントは寿命を迎え、買い替え時ということになるようです。

撥水剤の「POLON-T(ポロン-T)」を塗って対処する方法がある

そんな中ネットで情報収集をしてみると、「修理法」ではなく「対処法」として、ある方法を試している人を多数発見しました。

そのある方法とは……

① 40~50℃のお湯に溶かした重曹でテントを洗い、コーティングを剥がす。
② 十分に乾燥させたテントに信越化学工業の「POLON-T(ポロン-T)」を塗る。

というもの。

つまり、重曹の働きで加水分解したコーティングを剥がし、撥水剤である「POLON-T」を塗ることで撥水加工を自ら施す、ということです。

防水加工であるPUコーティングを剥がしてしまうため、一旦防水効果が0になってしまうので、この方法は最終手段であるといえます。

そして、この方法はあくまでも「対処法」であり、正解の修理法ではありません。確実にテントが復活する保証もありませんので、この方法を施す際は自己責任でお願いします!

果たしてタケノコテントは復活するのか? 「POLON-T」を塗ってみる

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このままでは引退を迎えてしまうタケノコテント。大好きなタケノコテントの復活を目指し、「POLON-T」を塗る方法を自己責任で試してみます!

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復活するといいなぁ……!

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準備したのはこちら。

  • 信越化学工業の「POLON-T」
  • 平ハケ
  • ペンキ受皿
  • 重曹

筆者は大きめのテントなので、上記の他に重曹で洗うための子供用プール、長靴を用意しました。

注意!
「POLON-T」は大変危険な薬剤です。手袋・マスクを必ず着用の上、必ず屋外で使用し、肌に触れないように気を付けてください。

手順①:40~50℃のお湯に溶かした重曹でテントを洗いコーティングを剥がす

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タケノコテントはとても大きなテントなので、子供用のプールを準備しました。

重曹を1袋入れて溶かし、フロアシートを入れて足ふみ洗いをします。

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長靴を履いて、踏み踏み……

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全体がお湯に浸るようにして、1時間くらい置きます。

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PUコーティングが剥がれてきました。

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剥がれてきたPUコーティングをシートから剥がしていきます。

重曹の濃度が濃いので本来であれば手袋を使用した方がよいのですが、作業しにくかったので素手で作業しています。肌の弱い方は、必ず手袋を使用してください。

テントの大きさにもよると思いますが、タケノコテントはこの作業に3日かかりました……

しかも、加水分解が進んでいない箇所はがっちりコーティングされていたので、結局一部は剥がすことができませんでした。

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コーティングを剥がす作業が完了したら、しっかり乾燥させます。

PUコーティングがほぼ全面剥がれたので、フロアシートは薄くなっています。

手順②:十分に乾燥させたテントに信越化学工業の「POLON-T(ポロン-T)」を塗る

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フライシートであれば実際に張った状態で塗るのが作業しやすいそうですが、フロアシートなので地面に広げて塗ることにしました。

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「POLON-T(ポロン-T)」を受皿に出して塗っていきます。

「POLON-T」は揮発性が高いので、少量ずつ出して作業します。砂糖などを入れる蓋つきの調味料入れを受け皿にすると、あまり揮発せずに作業できるようです。

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まんべんなく塗っていきます。

「コーティングする」というより、「生地に染み込んでいく」という感じです。

作業はスムーズだったのですが、「POLON-T」1缶では、タケノコテントのフロアシート全面塗るのに少し足りませんでした……

念のため重ね塗りしたかったので、追加で1缶オーダーして、ここで一度乾燥させました。

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こちらの写真。「POLON-T」が塗られている箇所と塗られていない箇所があるのですが、見た目にはまったくわからないですよね。

筆者撮影 | 水をかけてみたところ、POLON-Tを塗ったところと塗っていないところの差が一目瞭然……!

しかし水をかけてみたところ、その違いは一目瞭然……!

左側が「POLON-T」が塗られている方、右側が塗られていない方です。撥水効果がはっきりと見て取れますね

後日、2缶目の「POLON-T」が届いたので塗れなかった箇所に塗布し、さらに全面に重ね塗りしました。

重ね塗りということで、足りなくならないように節約しつつ全面が塗れるように調整して塗ってみました。

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乾燥させた後、水をかけてみました。

玉のような撥水は見られませんでしたが、浸透していってしまうということはありませんでした

ひとまずは「POLON-T」を使った初代タケノコテントの加水分解べたつき除去実験は成功と言って良いでしょう!

しかし喜ぶのはまだ早いかも……。撥水効果の検証をもうすこししっかりと行ってみました

加水分解を除去したテントの撥水効果を検証 大雨時以外なら使えそう!?

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我が家のタケノコテント。2度の重ね塗りを経て、フロアシートのべたつきはなくなりました。

ただ、PUコーティングがなくなった分、生地が全体的に薄くなり、耐水性が下がった感はどうしても否めません。

シャワーで水をかけたときは水が浸透することはありませんでしたが、湿った地面に敷いたとき、生地が湿ってきてしまうことはないのか検証してみることにしました

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下が土の人工芝に水をたっぷり撒いて、水をちょろちょろと出した状態でフロアシートを敷き、水を入れたバケツを乗せて放置してみました。

バケツの重量で圧力がかかる箇所がどんな影響を受けるか、検証です。

20分放置後。キッチンペーパーを当ててみましたが、濡れていませんでした

1時間放置後にもキッチンペーパーを当ててみましたが、こちらは圧力がかかっていたところが濡れていました

さすがに水の溜まっているところに1時間放置したら水が滲みてきてしまうようです。

「POLON-T」の撥水加工は、フロアシートのPUコーティングのように表面に膜を張るような加工ではないので、どうしても耐水圧は下がってしまうと思います。

実際にはグランドシートを敷いてからの使用になるので、水はけの悪いサイトやよほどの大雨の時以外は問題なく使用できるのではないでしょうか

結論! テントのべたつきは解消されたものの耐水圧は下がる

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数日間の検証期間を経て、テントのベタつきは無事に解消されました!しかし、やはり当初の耐水圧をキープすることはできないことがわかりました!

繰り返しますが大事なことなので最後にもう一度。

「POLON-T」の加工は、テントの性能復活を保証するものではありません。加えて危険な薬剤であることも必ず頭に入れて、加工する場合はあくまでも「自己責任」でお願いします

大切なテントだから長く使いたい。加水分解のべたつきを解消したい方は参考に

加水分解してしまい、どうしようもなかったベタベタ箇所ですが、そのベタつきは無事に解消されました。

ただ、変色してしまった箇所はどうにもなりませんでしたし、最高クラスを誇っていた耐水圧5000mmは確実に下がっています。

グランドシートの併用は必須だと思いますし、使用シーンも天候など条件付きになるかと思いますが、生地同士がくっついて剥がれない!という設営時の難点はひとまず解消されました。

今後、いつまで我が家のタケノコテントが現役でいられるかわかりませんが、大切なテントだからこそ長く使いたい。使える間はさらに大事に使っていきたいと思います。

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