核被害調査や救済基金設置を 日本のNGOや研究者ら 核禁会議へ提言

「核被害者援助と環境修復」に関する提言の内容を発表する川崎氏(左上)ら

 日本の非政府組織(NGO)や研究者、被爆医療の専門家らが2日、核兵器禁止条約第1回締約国会議への提言を発表した。核被害の実態調査・研究などを担う常設機関の新設や、被害者救済の基金創設などについて同会議で合意するよう勧告している。
 同条約は「核被害者援助と環境修復」を締約国に義務付け、NGOも含む国際協力を明記。21日オーストリア・ウィーンで始まる同会議で主要議題の一つとして、その枠組みづくりが議論されるとみられる。
 NGO核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)の川崎哲国際運営委員らの呼びかけで昨年12月から提言の準備を開始。日赤長崎原爆病院の朝長万左男名誉院長ら計13人が、被爆者の意見も踏まえ今年5月末に取りまとめた。
 提言は、被爆者をはじめ核被害当事者の議論への参加を原則とするよう要請。核被害の実態調査・研究、情報提供に当たる機関の設置、国際信託基金創設など計10点について同会議で合意し、取り組むよう求めている。
 広島で被爆した女性が、その後の人生でも流産や離婚、がん発症などに苦しむ状況を紹介。核実験場となった太平洋・マーシャル諸島などの環境汚染やジェンダー差別問題が核被害と密接に結び付いているとも強調した。環境汚染の被害を補償する同諸島などの援助制度も例示した。
 2日のオンライン会見で川崎氏は「日本の経験や知見を提示する責任があると考えた。具体的な成果が出せる分野。次のステップにしていくことを期待したい」と語った。
 提言の冊子(英語)は会場で配布予定。


© 株式会社長崎新聞社