6月19日まで 山口県立美術館で「野田弘志展」 

▲《聖なるもの THE-IV》2013年、油彩・カンヴァス、ホキ美術館

 6月19日(日)まで、山口県立美術館(山口市亀山町3、TEL083-925-7788)で企画展「野田弘志 真理のリアリズム」が開催されている。    

 1936年韓国(本籍地は広島県)に生まれた野田は、福山、上海と転居の後、1945年に日本に帰国。1961年、東京藝術大学卒業後はイラストレーターとして活躍していたが、絵画制作への想いは強く、30代半ばから画業に専念するようになった。1983年には加賀乙彦の小説『湿原』(朝日新聞朝刊連載)、1987年には宮尾登美子「松風の家」(『文藝春秋』連載)の挿画を担当。静物、化石・骨、人物など、年代ごとにメインとするモチーフや主題は変化しながらも、一貫して見事なリアリズムで描いてきた。    

 今回は、学生時代、イラストレーター時代、画壇に登壇した時期の作品のほか、近年手がけている等身大肖像画など約180点を展示。現代日本のリアリズム絵画を代表する野田が歩んできた「リアリズムの道」を回顧する展示内容となっている。    

 同館専門学芸員の矢追愛弓さんは、「観察に基づくリアルな描写と『生』と『死』のドラマが見どころ。《聖なるもの THE-IV》は、庭に出現したという鳥の巣が描かれた作品。巣の写真を撮った後、卵は5個に増え、ヒナがかえったものの、ある日突然、巣ごと忽然と消えてしまう。次世代の命を守るため、繊細に頑丈に作られている鳥の巣が、何かあると儚く消えてしまう。そんな命の尊さ、生きていることの奇跡について考えさせてもくれる作品」と語り、「モチーフがまるで目の前に在るかのような、驚くばかりのリアルさ、存在感を堪能して」と来場を呼びかけている。    

 開館時間は午前9時から午後5時まで(入館は4時まで)。観覧料は一般1400円、70歳以上と大学・高専生1200円。18歳以下は無料。     

  なお、新型コロナウイルスの感染拡大の状況に応じて、開館時間の変更やプログラムが変更される場合がある。

© 株式会社サンデー山口