<金口木舌>切り離せない関係

 セミがたくさんいるのは歯科医院の駐車場、カブトムシは城跡の周辺、アメンボは山の麓の水場。虫に夢中だった子どもの頃、毎日のようにかごと網を持って地域を駆け回った

▼「ミーンミーンミーン」。鳴き声に導かれ、いつの間にか他人の家の庭に入っていたこともある。怒られもしたが、庭を開放してくれた人がほとんど。自由に遊ばせてくれた人たちの優しさには感謝しかない

▼虫は自由奔放な自分に大切なことを教えてくれた。土地を知り、季節の変化を感じ、社会とのつながりを理解した。大切に育てたつもりでも死んでしまう命のもろさも知った

▼最近はそんな虫も敬遠されがちだ。国立青少年教育振興機構による「青少年の体験活動等に関する意識調査」では、チョウやバッタなどの昆虫をつかまえたことがある子どもは2012年以降減り続けている

▼人間はこの小さな命を繊維に利用したり、食べたり、都合よく利用してきた。私たちとは切り離せない関係だ。6月4日は「虫の日」。この日だけでも虫に思いをはせてはどうだろうか。

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