バスケWリーグ富士通・篠崎、今季で引退 「やっぱり悔いない」美学貫く

準優勝のメダルを掲げる富士通・篠崎(右)と町田=17日、東京・国立代々木競技場(Wリーグ提供)

 バスケットボール3人制の東京五輪女子代表で、Wリーグ富士通のガード篠崎澪(30)=横浜市旭区出身=が今季限りで引退した。「お世話になった人や両親にずっと見守られてコートに立てた。幸せなバスケ人生、やっぱり悔いはない」。地元の神奈川にこだわり、オリンピック出場の夢もかなえた充実の競技人生だった。

◆盟友に感謝

 4月17日、東京・国立代々木競技場で行われたWリーグのプレーオフ決勝第2戦。6季ぶりに勝ち進んだ富士通は篠崎が19得点と引っ張ったが、悲願には届かなかった。

 2014─15年シーズンから第一線を駆け抜け、リーグ通算217試合。表彰台で盟友の町田からメダルを首にかけられると、抑えていた涙があふれた。「悔しさやこれで終わりとか、ありがとうとか。いろんな感情が去来した」

 東京五輪の5人制で銀メダルを獲得した町田とは、長く息の合った連係でコート上を席巻してきた。「選手として一段高めてくれた。町田がいなかったら今の私はいない」。同年代の司令塔に刺激を受け、プレーの幅を広げた8年間だった。

◆地元一筋に

 小学1年生からバスケに魅了され、金沢総合高時代は練習に打ち込むため学校近くのアパートに引っ越したことも。松蔭大に進学後、持ち前の攻撃力を磨いて全日本大学選手権(インカレ)優勝を果たし、富士通からオファーを受けた。

 「地元で頑張ることが恩返しになる。そういう選手がいてもいいんじゃない」。松蔭大・小林夕紀恵監督の後押しを受け、川崎市を拠点とするレッドウェーブ入り。同じミニバスで高校の先輩、小畑亜章子さん(元デンソー)のようにWリーグで活躍し、五輪にも出場する夢を追ってきた。

 16年リオデジャネイロ大会の直前にはメンバー落ちを経験したが、「きつかったけど、もういいやじゃなくて次につなげられたら」。翌シーズンにキャリア最高の1試合平均16.7得点をマーク。昨夏の東京大会で初実施された3人制では、チーム最年長選手として準々決勝進出に貢献した。

◆最高の光景

 今季を集大成とすることは開幕前から決めていた。五輪を一区切りとする考えもあったが、町田の熱心な引き留めもあって翻意。ただ、仲間やファンに惜しまれながらコートを去ったのは、篠崎なりの美学だった。

 「日本代表以外でレギュラーから外されることはなかった。負けず嫌いなのでベンチスタートは耐えられないと思ったし、年々衰えを感じていた。そういう姿を見せて終わりたくなかった」

 最後の舞台には、女子バスケ人気の高まりもあって史上最多の7151人が集った。「ファンと一体感を出せるのがスポーツの醍醐味(だいごみ)。新型コロナウイルス禍で制限が続いた中、元気とか勇気とかを与えられたことはすごくうれしかった」。24年間のキャリアで最高の光景は、今も目に焼き付いている。

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