“ゆうこう”でコロナ禍打開 長崎「霧氷酒造」 商品や体験事業に取り入れ

コロナ禍以降に開発した果汁100%の「まるごとゆうこう」を手にする浦川社長=長崎市、霧氷酒造

 長崎市神浦夏井町の酒造会社「霧氷酒造」(浦川英孝社長)は、地元特産のかんきつ類「ゆうこう」の活用を進めている。果汁や果皮を使った商品開発に加え、自社の畑で果実を収穫できる体験事業にも新たに取り組む。新型コロナウイルス禍の影響で厳しい状況が続く中、打開に向けて挑戦を続ける。
 コロナ禍の影響で商品を卸している飲食店や土産売り場に人が集まらず、同社の売り上げは以前と比べ6割ほどに落ち込んだ。コロナ対策のまん延防止等重点措置が解除され、各地に客足が戻りつつある今も状況は好転していないという。
 そのような中で同社は、地元の外海地区の特産ゆうこうに活路を見いだす。爽やかな香りやまろやかな酸味が特長で、果汁や果実がさまざまな料理に活用される。キリシタンとゆかりの深い同地区や土井首地区に自生していたなどストーリー性もあり、売り込むポイントが多いという。
 同社は数年前から自社の畑でゆうこうの木を約100本育てており、これまで果汁入りのリキュール「ゆうこうのお酒」などを販売してきた。コロナ禍以降はゆうこう活用の動きを強め、果汁100%の「まるごとゆうこう」や、果皮や果汁を使用した菓子「長崎うま果」を開発。今後も飲み物に限らず、ゆうこうを使った商品開発を進めていくという。

霧氷酒造が育てているゆうこうの木(同社提供)

 コロナ禍以降、商談の形態も変化した。以前は東京などへの出張がメインだったが、現在はインターネットでの「リモート商談」が増え、出張費なしで多くの業者と話ができる。地域性やストーリー性があるゆうこうを使った商品に対し、大都市圏の業者が興味を示すケースは多く、浦川社長は「ビジネスチャンスとみている」。
 同社はさらに、体験事業にもゆうこうを活用する。年会費を払えば焼酎の仕込み体験ができたり自社商品がもらえたりする「一口蔵元」事業に、今年からゆうこうの剪定(せんてい)や収穫のメニューを加え、地域感を強めた。得意客との関係維持、強化を図る考えだ。
 浦川社長は「ゆうこうは地域の宝。コロナ禍の影響で厳しい状況が続いているが、うまく売り込み商機につなげたい。地域の一員として、地元のPRや活性化にも活用していきたい」と意気込んでいる。


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