WEC第2戦でトヨタ8号車を襲ったトラブルの真因判明「走行距離50km程度の新品だった」と技術首脳

 WEC世界耐久選手権のハイパーカークラスに参戦しているトヨタGAZOO Racingのテクニカル・ディレクター、パスカル・バセロンは、5月の第2戦スパ・フランコルシャン6時間レースで8号車GR010ハイブリッドを襲ったトラブルについて、その原因を説明した。

 6月4日、トヨタは第3戦ル・マン24時間の公開車検2日目に登場。3年ぶりに市内のリパブリック広場へと戻ったこのイベントで、2台のGR010ハイブリッドと5人のドライバー(フォーミュラEに参戦するセバスチャン・ブエミは欠席)、そしてチームスタッフが観客の前に姿を現した。

 車検場ではドライバーおよびチームスタッフが、メディアの取材に対応する機会がある。ここでバセロンは前戦でのトラブルについて言及した。

3年ぶりに市内へと戻ったル・マン24時間の車検で、チーム記念写真撮影に臨むトヨタGAZOO Racing

 第2戦スパの決勝序盤、首位を走行していた8号車のブエミは、赤旗中断明けのセーフティカー先導走行に出遅れ、その後もコース途中で2度、マシンを停止させてトラブル復旧を試みたが、最終的にブエミはハイブリッドシステムの「絶望的なエラーの発生」を確認し、コース脇でマシンを飛び降りていた。

 スパの決勝直後、バセロンは赤旗中断中に異変を感知していたこと、システムの再起動により復旧を試みたことを明らかにし、「これほど絶望的なハイブリッドの問題を抱えたの初めてだと思う」とコメントしていた。

 ル・マンの車検場に姿を現したバセロンは次のように説明し、スパでのトラブル原因を特定したことを明らかにした。

「今回の問題は、高電圧コンバーターに関連するものだ。それが故障していた」

「そのパーツは新品だった。走行距離はとても少なく、50km程度だった」

 トヨタは現在のル・マン・ハイパーカー時代よりも前、LMP1ハイブリッド時代の2016年から、このコンバーター技術を採用している。

「バッテリーの高電圧を、低電圧回路へと変換するものだ」とバセロン。

「それは(LMP1時代のTS050ハイブリッドと)同じコンセプトのものであり、このGR010で求められる低い電圧レベルへと、調整しただけだ」

 公開車検を終えた2台のGR010ハイブリッドは、6月5日、ル・マン24時間サーキット(通称サルト・サーキット)での、計8時間に及ぶテストデーのセッションへと臨む。

車検場で報道陣のマイクに囲まれるトヨタGAZOO Racingのテクニカル・ディレクター、パスカル・バセロン

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