「イモの語り部育てたい」研究きっかけ、尽きぬサツマイモ愛 川越いも友の会会長ベーリ・ドゥエルさん

サツマイモを通じて川越のイメージアップに貢献したベーリ・ドゥエルさん=川越市元町のサツマイモまんが資料館&川越いも学校

 川越一番街商店街の一角、蔵造りの和菓子店「紋蔵庵 蔵の街店」2階に足を踏み入れると、サツマイモ関係の資料が所狭しと並ぶ。2019年に開館した「サツマイモまんが資料館&川越いも学校」だ。共同で館長を務めるのは、米国出身のベーリ・ドゥエルさん(72)。川越イモの保存運動に取り組む「川越いも友の会」会長で、埼玉県川越市にキャンパスがある東京国際大学の名誉教授でもある。

 初来日は、23歳の1973年だった。オレゴン州セーレム市のウィラメット大学卒のドゥエルさんは、姉妹校の国際商科大学(現東京国際大学)に短期留学。「ウィラメット大学の学部長だった父(ポールさん)が日本好きで、好奇心を持った」。翌74年に再来日。同大の英語講師となり、75年には留学中に市内の週末ホームステイ先で知り合った岡野正子さん(2001年に52歳で死去)と結婚した。

 サツマイモとの出合いは、市内に住んで間もなくの頃。ドゥエルさんが川越在住と知ると、相手から「イモの街ですね」と言われた。「いいイメージがないことも分かった。食文化に興味があったので、研究してみよう」。当時、比較文化を学んでいた上智大学大学院で、サツマイモをテーマに論文を執筆した。

 研究と併行して、サツマイモを使った街おこしにも没頭する。別々に活動していた人たちともつながり、84年には発起人となって川越いも友の会が誕生。俳句を全国から募集したり、「川越いもソング」を発表したり、さまざまな文化活動を展開した。会は91年、サントリー地域文化賞を受賞。「どんなことでもやってみた」。サツマイモが再評価されるに従い、街も人気観光地の地位を確立する。

 継承が今後の大きな課題だ。「イモの語り部を育て、川越のために活動する人を増やしたい。資料を電子化して保存し、関係する書籍の英訳も進めるつもり」。サツマイモ愛が尽きることはない。

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