宇大の科学人材育成プログラム注目集める 高度な講義、実験が人気 本年度、ゼミナール新設も

基盤プランの選択科目「環境工学実験講座」を受講する高校生ら=2021年11月、宇都宮大峰キャンパス

 「理科数学好き高校生、共に学び高めあおう-」。宇都宮大科学人材育成プログラム(iP-U)が、科学に関心のある高校生から注目を集めている。同大の施設や設備を使い、教授らの指導を受けながら興味関心のある分野を研究できるのが魅力で、毎年募集人員を上回る応募がある。受講生たちは学会発表や各種大会に挑戦しながら、自身の可能性を広げている。

 5月21日午後、宇都宮市峰町の宇都宮大峰キャンパス。同大バイオサイエンス教育研究センターの宮川一志(みやかわひとし)准教授(39)が「面白い研究テーマ、実験デザイン力、正しい発信力が大切」などと、研究者に必要な力を説いた。11人のiP-U才能育成プラン受講生たちは、熱心にメモを取りながら将来へ思いをはせた。

 iP-Uは、科学技術振興機構が大学などと連携して国際的科学者の育成を目指す「グローバルサイエンスキャンパス」の採択事業。同大は基礎になる基盤プラン(定員40人)と、さらに研究を進める才能育成プラン(同15人)を設けている。両プランとも高校では体験できないような講義や実習ができるのが特徴だ。

 基盤プランは、英語や問題発見・解決力を身に付ける必修講座に加え、遺伝学や植物ワクチン、コーチングなど30以上の選択科目から興味のある科目を受講して科学的な思考方法を学ぶ。科学や技術の進歩に関心があり受講したという作新学院高2年柿沼直希(かきぬまなおき)さんは「少し難しかったが、みんなに付いていこうと頑張った」と話す。

 継続したい受講生は、才能育成プランに移る。「研究者の卵」として指導を受けて研究室にも出入りしながら、学会発表や各種大会で入賞できるオリジナルの研究を目指す。ダンゴムシやアリジゴクなどを研究する白鴎大足利高2年黒杭功祐(くろくいこうすけ)さんは「精度の高い実験をして日本学生科学賞中央予備審査を突破したい」と意欲を見せる。

 受講生間の交流など、学び以外の刺激もある。宇都宮女子高2年大岡千帆(おおおかちほ)さんは「文系に理系の考え方を生かそうとする視野の広さに驚いた」と話す。

 高い学習意欲や能力のため、学校に適応しづらい「浮きこぼれ」の傾向にある受講生は少なくない。iP-Uコーディネーター松田千香(まつだちか)さん(50)は「同じ境遇の同年代に会える場所にもなっている」とし、仲間づくりも重視している。

 主な成果は、担当教授らが所属する学会の発表や科学オリンピック国内大会、とちぎアントレプレナーコンテストなどでの入賞。今後は、受講生の成長を測る客観的な指標づくりや大学卒業後の進路調査を進める予定だ。

 本年度は、新たに書類選考がなく気軽に参加できるゼミナールを新設し、より多くの高校生の参加を募る。松田勝(まつだまさる)教授(53)は「iP-Uは子どもたちの知的好奇心を満たすプログラム。その能力を最大限に引き出したい」と話している。

 ▼グローバルサイエンスキャンパス 科学技術振興機構の事業で、本年度は全国12大学・研究所が実施する。国際的に活躍できる科学者の育成が目的。宇都宮大は2015年度から採択され、県内の高校生を中心に海外からの受講もある。本年度、同大は15日まで受講生を募集中。

才能育成プランの講義を受ける高校生=5月21日、宇都宮大峰キャンパス

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