石川由衣 新作映画は西澤監督と舞台挨拶で初対面 コロナ禍でリモート進行

声優の石川由衣が5日、アニメ映画「とんがり頭のごん太―2つの名前を生きた福島被災犬の物語―」の公開記念舞台あいさつに参加し、西澤昭男監督と初対面を果たした。コロナ禍の影響でアフレコの演出はすべてリモートで行われたそうで「アニメーションはたくさんの方が関わっております。みなさんの頑張りでこの作品が出来上がりました」とスタッフ陣に謝意を述べた。

舞台挨拶に参加した西澤昭男監督(左)と石川由衣

東日本大震災の福島第一原発事故で、飼い犬と離れ離れになった福島県浪江町の一家と、東京でペットを救済するボランティア活動を行う女子大学生が描かれる映画。主人公の女子大学生・吉野由紀役を演じた石川は、最初に脚本を読んだ際の感想を尋ねられ「東日本大震災は東京で経験しましたけれども、東京から知り得る情報というのはニュース番組でした得られないですし、もちろん大変な状況や悲しい想いをされた方がたくさんいらっしゃると思うんですけど、それ以上にいろんな大変なことがあったことや、被災犬を保護する活動があったことはペットを飼っていないこともあって知らなかったことがたくさんあって、脚本を読んで改めて大変な思いをされた方がいっぱいいたんだなということを感じました」としみじみと語った。

石川と西澤監督はこの日が初対面。リモートで西澤監督と作品を作り上げたエピソードを聞かれた石川は「アニメの収録って基本的に私たちは収録ブースに入っていて、スタッフさんたちはスタッフブースにいて離れていて、音響監督さんが間に立って監督の思いを私たちに伝えてくださったりするので、そういった意味ではあまり変わることはなかったんですけど、最初に画面越しに監督とお話をさせていただいて、とてもリアリティのある作品でもあるので『自然に演じてほしい』というお話をいただきました」と振り返った。

自身が演じた役柄にちなみ、学生時代に抱いていた夢を尋ねられた石川は「私は小さい頃から劇団に入ってお芝居をずっとしていたので、悩むとか、迷うというよりは、ずっとこのお仕事をしていたいという強い思いでここまで来たかなという感じですね」と感慨深げに語り、これからの夢を質問されると「小さい夢なんですけど、私はまだ福島に行ったことがなくて、でも今回、この作品をやるにあたって母と話していたら、まったく縁がないと思っていたんですけれども、母方の祖父が福島生まれで、曽祖父は福島で農家をやっていて、大名行列のお殿様が立ち寄るくらいの大きな農家をやっていたという話を聞いて、“そうだったんだ!”と思いました。自分に福島の血が入っていたとは知らなかったんですけれども、だからこそ、いつか福島に行って“なみえ焼きそば”を食べたいですね(笑)」と目を輝かせた。

西澤監督は「被災されてまだまだ状況の良くない方もおられるし、原発では汚染水の問題などもありますけど、できるだけみなさんに(当時の)状況を知っていただきたいと思い、また、それ以降に生まれた若い人たちは全然状況がわからないと思うので、そういう方々へ向けて作品を作らせていただきました」と熱い思いを吐露。もともとドキュメンタリーだった作品を、アニメ化した理由を問われると「アニメのほうが、息が長続きするということと、子どもと大人が見たあとにいろんな話し合いができるという意味でアニメのほうがいいと思いアニメ化しました。見たあとに原発の問題や保護権の問題などいろいろ話し合いをしていただければいいかなと思います」と語った。

石川は「東日本大震災から11年が経ちましたけれども、この映画をアニメーションではあるんですけどドキュメンタリーのような、本当にあったことがここに描かれています。あのとき、どんな大変な思いをした方々がいたか、そしてどんな悲しい思いをした方がいたか、そしてそんな中で由紀のようにボランティアとして活動していたり、そんな方たちと出会って前を向いて歩む人たちの物語になっております。東日本大震災を忘れないために、ぜひ見ていただきたいですし、私もずっと忘れないでいようと思います」と呼びかけた。

「とんがり頭のごん太 ―2つの名前を生きた福島被災犬の物語―」ポスタービジュアル (C)ワオ・コーポレーション/光文社

(よろず~ニュース編集部)

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