パリから“ミニバン相乗り”でやってきたFE御一行/ランボルギーニLMDh参画チームの噂etc.【テストデーTopics】

 6月5日、サルト・サーキットで計8時間にわたって行われた、第90回ル・マン24時間レースのテストデー。決勝を翌週に控え、各陣営はこの公道を含む全長13km超のコースを今年初めて走行し、マシンのセットアップを行った。

 ここでは、テストデーのパドックで集めた情報をお届けする。

■IMSAデトロイト、FEインドネシアからの“大移動”

 前日の4日土曜に他カテゴリーのレースに参戦したドライバーたちは、それぞれテストデーに間に合うようにル・マンへと到着した。

 最初に到着したのは、南仏ポール・リカールでのGTワールドチャレンジ・ヨーロッパを戦い終えたドライバーたちで、彼らのほとんどは早朝にル・カステレから飛行機に乗り、朝食前にル・マンへと辿り着いた。

 やや遅れて、インドネシア・ジャカルタでのフォーミュラE世界選手権、およびアメリカ・ミシガン州デトロイトでのIMSAウェザーテック・スポーツカー選手権に参戦したドライバーたちが到着し、午後のセッションに参加した。なお、トリスタン・ボーティエは夜行便でアメリカから移動し、午前のセッションにも参加している。

 LMP2のリアルチーム・バイ・WRT41号車をドライブするノルマン・ナトは、パリからル・マンまで、フォーミュラEドライバーたちを乗せたミニバンを率いてやってきた。ナトのクルマに同乗したのはアレクサダー・シムス、ニック・キャシディ、ロビン・フラインス、サム・バード、アントニオ・フェリックス・ダ・コスタだ。

 このほか、トヨタGAZOO Racingのセバスチャン・ブエミもジャカルタから無事ル・マン入りし、午後のセッションで走行を重ねている。

 昨年から比べると、COVID-19の検査がなくなったことにより、他のシリーズに参戦するドライバーやチーム関係者もテストデーへ参加がしやすくなっており、移動が唯一の大きなハードルとなっている。

ノルマン・ナトがドライブするリアルチーム・バイ・WRTの41号車。ナトはテストデー前にも、“大役”を果たしたと言える。

■トヨタの“190km/h以上”の影響は「やや小さい」

 トヨタGAZOO Racingでテクニカル・ディレクターを務めるパスカル・バセロンによれば、チームはトラブルなくテストデーの走行を終えたという。

「午前中はエアロマップ、午後はメカニカルのセットアップとタイヤテストを行った」とバセロン。

 また、今年からGR010ハイブリッドに課されている、ハイブリッドモーターの駆動可能速度“190km/h以上”のル・マンでの影響は、第1戦セブリングや第2戦スパよりも「やや小さい」とバセロンは示唆している。

テストデーでトップタイムを記録したトヨタGAZOO Racingの7号車GR010ハイブリッド

 グリッケンハウス・レーシングは、午前中のセッションで電気系統の不具合が発生したため、708号車グリッケンハウス007 LMHのステアリングホイールを交換したと、チームオーナーのジム・グリッケンハウスは語っている。

 その後、午後のセッション2では2番手タイムをマークしている。

 LMP2のベクター・スポーツは、午前中のセッション終了間際にサスペンションにトラブルが生じ、大幅にトラックタイムを失った。その修復のため、午後のセッションの最初の1時間半はガレージで過ごすことになり、その後ニコ・ミューラーがマシンをコースに戻している。

今季からWECにフル参戦しているベクター・スポーツ

■“リザーブ”たちもテストデーで活躍

 チーム・ペンスキーの5号車オレカでは、テストデーのみに追加エントリーしているマシュー・ジャミネとハリソン・ニューウェイが、午前中にそれぞれ5周を走行している。その他の追加ドライバーでは、ジョディ・ファニンがJMWモータースポーツのフェラーリ488 GTE Evoで8周をこなした。

 ジャミネはチーム・ペンスキーのリザーブドライバーであると同時に、ポルシェGTチームのファクトリーLMGTEプロ・プログラムにおいても、リザーブの役割を担っている。

 また、プジョーLMHドライバーのポール・ディ・レスタは、ル・マン・ルーキーのジョシュ・ピアソンの“リファレンス(参考・基準)”として、ユナイテッド・オートスポーツUSA23号車のテストデーのラインナップに加わったと、16歳のピアソンは語っている。

 ディ・レスタは、オリバー・ジャービスとアレックス・リンがデトロイトから移動している間に、ピアソンのル・マンデビューに向けた準備をサポートした。

 このほか、ジャズマン・ジャファーはLMP2クラスに2台を送り込むJOTAのリザーブを務め、その名前はチームのレギュラードライバーとともに、ピットのパーテーションボードにも記載されている。

チーム・ペンスキーの5号車オレカ07・ギブソン

■意外なル・マン初出走ドライバーたち

 ペンスキーからエントリーするポルシェファクトリードライバーのデイン・キャメロンは、デイトナ24時間レースには13回の出走を誇っているが、ル・マン24時間レースに参戦するのは今年が初となる。

「このレースは経験が重視されるレースで、僕は初出場の機会をなかなかつかめなかった」とキャメロンは言う。

「デイトナは何度も走っているのに……ちょっと偏っているよね。デイトナは13回も出ているのに0勝だけど、ル・マンではもう少し運があるかもしれないね!」

 もうひとり、意外なル・マンデビューを飾るのは、ARCブラティスラバの44号車オレカで参戦するフランス人のボーティエだ。長らくIMSAのトップカテゴリーで活躍してきたボーティエは、IMSAをスピードソース・マツダで数戦を走った2014年以来の、LMP2ドライブともなる。

 そのARCブラスティラバはル・マン向けにカラーリングを一新。WECで使用しているカラフルなデザインに、紫のストライプが加わっている。

ARCブラティスラバの44号車。カラーリングが改められている

■アイアン・リンクスがランボルギーニLMDhプログラムに参画か

 最近のパドックの噂によると、アイアン・リンクスがランボルギーニのLMDhプログラムに参加することが決定しているという。

 だが、チームの共同創設者であるアンドレア・ピッチーニは、「多くの潜在的な契約に動いている最中」であると述べ、すでに何らかの合意が形成されているとの憶測を否定した。

 ピッチーニはSportscar365に対し、次のように語っている。

「プレマとともにLMP2に参戦したのは、LMDhかLMHに参入できるようにするためだ。かなり素早く準備を進めなければならない。来月には決断しなければならない。いまのところは、すべての挑戦可能性と、何がベストな選択肢なのかについて、検討している」

 ピッチーニによれば、アイアン・リンクスはファクトリーチームとして参画することだけを、固く決意してるという。

2022年のル・マンへはLMGTEアマクラスに4台のフェラーリ488 GTE Evoを送り込んでいるほか、LMP2ではプレマとジョイント参戦しているアイアン・リンクス

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 テストデー翌日の6日には、走行プログラムは予定されていないが、BMWが2023年のIMSA・GTPクラスに投入するLMDh車両について、さらなる発表を行う予定となっている。

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