伊勢佐木町の大火きっかけに誕生 横浜の消防艇、歩み訪ねて

鶴見水上消防出張所の水難救助隊員(前列)と水上消防隊員

 海上から横浜の安全を守る横浜市消防局の鶴見消防署鶴見水上消防出張所(同市鶴見区)。大火を契機に誕生した横浜の消防艇の黎明(れいめい)期をたどるとともに、時代に対応しながら海上での消火・救助活動を担う拠点を訪ねてみた。

 横浜での消防艇の誕生は、中区伊勢佐木町一帯が焼失した1899年8月の雲井町大火が契機になったとされる。

 87年に日本初の近代水道が導入され、消火栓を用いた消火方法へと変わっていった。だが、雲井町大火当時は夏場の水道の断水率が高く、火災時も使えない消火栓が多かったため火が燃え広がったという。これを機に居留地消防隊で活躍していた西洋式の高価な大型の蒸気ポンプや腕用ポンプが見直され、横浜水上警察署の小型汽船「萩号」には蒸気ポンプが搭載された。

 横浜都市発展記念館の吉田律人調査研究員は「消防艇は水路がたくさんある横浜で活躍した」と解説する。1910年の野毛町の大火では「萩号」が水上から放水した記録も残る。

 現在、消防艇は鶴見水上消防出張所に2代目「よこはま」(全長32.2メートル、全幅7.3メートル、総トン数120トン)と3代目「まもり」(全長24.5メートル、全幅6メートル、総トン数49トン)が配備されている。横浜港内だけでなく、市内全域の沿岸部や海域を担当する。2018年7月に起きた横須賀港に面した横須賀市内の倉庫火災では、消防広域応援体制に基づき出動した消防艇「よこはま」が延焼を最小限に抑えて消し止める活動に一役買ったこともある。

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