生命の源・アミノ酸 宇宙に存在 りゅうぐう砂から20種以上確認

探査機はやぶさ2が持ち帰った小惑星りゅうぐうの石や砂(JAXA提供)

 宇宙航空研究開発機構(JAXA)の探査機「はやぶさ2」が小惑星りゅうぐうから持ち帰った砂に、生命の源とされる有機物のアミノ酸が20種類以上含まれていたことが6日、関係者への取材で分かった。宇宙にアミノ酸が存在することを初めて直接確認した形で、それが地球にもたらされて生命が誕生したとする学説を後押しする成果。分析を手掛けた研究グループが近く論文を発表する。

 関係者によると、りゅうぐうの試料からは、筋肉をつくるのに重要なバリン▽新陳代謝を促すアスパラギン酸▽コラーゲンの材料となるグリシン▽うま味成分のグルタミン酸―といった多種類のアミノ酸が検出されたという。

 太陽系の起源や地球の生命誕生の謎を解き明かすことを目的とした小惑星探査で、はやぶさ2がりゅうぐうの表面や地下から2回にわたって採取し、計5.4グラムの試料を持ち帰ったのは2020年12月。JAXAを含め、岡山大惑星物質研究所(鳥取県三朝町)や東京大、広島大など全国の研究機関が21年から本格的に分析していた。

 有機物や水素原子が含まれていることは同年6月に公表されており、タンパク質のもととなるアミノ酸が含まれているかどうかが注目されていた。

 アミノ酸は、約46億年前に誕生した地球には存在していたが、マグマに覆われるなどしていったん消滅。その後、宇宙から飛来した隕石(いんせき)が新たなアミノ酸を運んできたとの仮説がある。地上で発見された隕石からアミノ酸が見つかった例もあるが、地球で付着した可能性もあった。りゅうぐうの試料は、その“汚染”がほとんどない状況で届けられており、その仮説を補強する結果にもなった。

 アミノ酸と生命 アミノ酸は複雑な立体構造を持つ有機物で、長くつながると筋肉や髪の毛を作るタンパク質になる。生命に欠かせない材料だが、地球上の化学反応で作られたのか、宇宙からもたらされたのか分かっていない。鏡に映すと同じ形になるような「左手型」と「右手型」がある。人工的に化学合成すると、ほぼ等しい割合で出来上がるが、自然界には左手型が圧倒的に多い。小惑星りゅうぐうで見つかったものに左手型が多ければ、アミノ酸は宇宙からもたらされた可能性が高まる。

りゅうぐうに着陸する探査機はやぶさ2のイメージ(JAXA・池下章裕氏提供)
はやぶさ2が探査したりゅうぐう(JAXA、東京大など提供)

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