法改正で変わる! 男性の育児休業 「取るのは当然」Z世代が激論

TOKYO MX(地上波9ch)朝の報道・情報生番組「堀潤モーニングFLAG」(毎週月~金曜7:00~)。「フラトピ!」のコーナーでは、変化する“男性の育児休業”についてキャスターの田中陽南が取材しました。

◆法改正で、男性の育休取得率は変わる?

男女とも希望に応じて仕事と育児を両立できる社会を目指し、今年4月から改正育児・介護休業法が段階的に施行。まずは育休制度の周知、取得の意向確認が義務化され、10月には産後8週以内に4週間取得できる「産後パパ育休」が新設。育休は、2回まで分割が可能に。そして、来年4月からは従業員1,000人以上の大企業は育休取得率を公表することになります。

厚生労働省が発表している男女別の育児休業取得率を見ると、女性は約81.6%で男性が約12.7%。男性の取得率は年々増えてはいるものの女性の6分の1程度。

◆男性の育休取得率100%を誇る、積水ハウス株式会社

そんななか、男性の育児休業取得率が高い企業があります。それは、従業員数約1万5,000人の住宅メーカー「積水ハウス株式会社」。

同社で育休取得推進を担当するダイバーシティ推進課の木原さんに話を伺うと、積水ハウスの男性社員の育休取得率は100%。2019年2月に独自の取り組みを行って以降、約3年間100%を継続しています。

いち早く男性の育休取得を推し進めたきっかけのひとつは、同社社長がスウェーデンのストックホルムで見たある光景だったとか。「弊社の社長がスウェーデンのストックホルムにIRで訪れた際、公園でベビーカーを押す親のほとんどが男性だったことに驚き、当社でも取り入れようとしたことから始まっています」と木原さん。

子育て先進国のスウェーデンでは、男性も3ヵ月の育休取得が一般的で、ベビーカーを押しながらコーヒーを飲む男性を指す"ラテダッド”という言葉が定着しているとか。

約3年に及ぶ改革で積水ハウスでは現在、社員が妊娠の報告をすると自然に「育休はいつとるの?」という会話が生まれるそう。木原さんも「かなりの風土改革が行われたのではないかと思っています」と自信を覗かせます。なお、本来、育休期間は給付金を申請することで給料(日割り計算)の67%が支給されますが、積水ハウスでは有休が1ヵ月分もらえます。

◆育休取得のポイントは"社内の雰囲気”

同社で育休を取得して双子の女の子を育てる濵地さんを取材すると、「貴重な時間をもらえてすごくよかった」と笑顔を見せます。濵地さん曰く、育休取得のポイントは"社内の雰囲気”。「すごく軽い感じというか、いい意味で特別なことじゃない雰囲気になっていたのがよかった。この制度ができた2018年頃から(育休を)取ってくれている方が多いので、私が取ってもそういう雰囲気ができているんだと思う」と話します。

また、業務面でも工夫が。休暇中の業務の引き継ぎがスムーズに進むよう、育休取得に関する計画書を作成。業務を誰に引き継ぐのか細かく書き込み、引き継ぐ同僚や上司、さらには配偶者にもサインを求めています。木原さんは「権限移譲して部下に仕事を任せることで人材育成に繋がったり、お互い様の精神が芽生え、困っている人がいたらフォローしようというような風土もできてきたと聞いています」と多くのメリットがあると話していました。

◆中小企業における男性育休取得へのハードル

一方で、従業員は約百人、ゲーム機器の部品などの精密加工を行うサン精密化工研究所では、昨年夏に初めて男性の育児休業取得者が出たそう。総務部・小林さんによると、その申請があった際の社内の反応は「前例がなかったので正直驚いたというところを聞いている」と振り返ります。

育休を取得したのは営業技術職の男性。同社は社員数が少なく、専門性が高い仕事のため、代わりの人材をすぐに探すのは困難だったものの、育休取得者が所属していたチームは比較的若い社員が多く、協力的だったため取得が実現。

しかし、小林さんは「ギリギリの人員で業務をこなしているところがあるので、同じ部署内で2、3人から同時に申請が出てしまうと、どう対応するかは課題」と頭を悩ませます。

そして、男性の育休取得を推進する策は、法改正された今でも答えが出ていないと話します。補助金の支給は企業としてありがたいものの、やはり専門性の高い職種は人材を確保するのが難しく、「企業内の努力でやっていかないといけないと思ってはいるが…」と小林さん。「弊社は比較的に若い社員が多いので、企業風土として育休を希望すれば取れるというところを根付かせていきたいとは考えております」と今後の展望を語っていました。

◆育休期間、働き方…改善すべき点は山積

男性の育休取得に関しては企業規模、そして風土によって各社状況は異なっているようです。この日出演していた3人のコメンテーターはみな代表、もしくは経営者ばかり。

インスタメディア「NO YOUTH NO JAPAN」代表の能條桃子さんは、積水ハウスの男性育休取得率100%に驚きつつ「やはり大企業だからできることがあり、仕事の種類によっても違うのかなと思った」と率直な感想を述べます。

その上で「どうやって期間を伸ばしていく?」と提言。法改正により男性の育休が義務化されれば大企業では取得率が伸びることが想定されるものの、「(育休)期間について女性は、8割以上が半年以上取るなか、男性は率というと数日取ってとりあえず(済ませている)というところ」と指摘。

まずはそこから改善すべきとしながら、一方で「女性は(育休を)長く取ってマミートラックに乗せられて、というところを変えていく必要がある」と男女ともに問題点があることを示唆。

他方、microverse株式会社 CEOの渋谷啓太さんは「そもそも論、平日日中8時間固定で働くスタイル古くない?」と働き方に対して言及。

「アウトプットが出てくるならいつ仕事をしてもいいと思っているので、朝に子どものお世話があるなら、午前中に子育てをし、空いている時間に資料を作るなどし、夜に仕事をしてアウトプットが出せるならそれでいい」と自身の見解を示し、「育休という固定のスタイル自体が今の時代に合っていない。古いのではないか」とさらなる改善を求めます。

そんな渋谷さんの意見に、株式会社POTETO Media代表取締役の古井康介さんも賛同。そして、「男性の育休は良好な関係上当然。パートナーとの関係もそうだし、会社と従業員の関係上、取りたいときに取れないというのはあり得ない」と力を込めます。

さらに、「子育ては1~2年で終わらない。18歳まで育てるかもしれないし、そしたら18年間の働き方を全部整理しないといけない。(育休を)3ヵ月取って終わりではない」と主張すると、能條さん、渋谷さんも大きく頷き、3人の間には一体感が。

そして、能條さんからは「労働時間をいかに短くするのかも含め、午前中だけ働くスタイルで半分は休業のような制度ができるとか、変わっていかないと難しい」。古井さんからは「極端な事例が取り上げられ、それは『ウチの会社ではできない』となるのではなく、『とりあえずやろう、ではどこからやる』という議論が大事」との声が上がり、渋谷さんからは「夜に働くとなったら、時間外労働になってしまうとか意味がわからない」と厳しい意見が飛んでいました。

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<番組概要>
番組名:堀潤モーニングFLAG
放送日時:毎週月~金曜 7:00~8:00 「エムキャス」でも同時配信
キャスター:堀潤(ジャーナリスト)、田中陽南(TOKYO MX)
番組Webサイト:https://s.mxtv.jp/variety/morning_flag/
番組Twitter:@morning_flag

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