【動画あり】改正育児・介護休業法の概要と背景を専門家が解説!

2021年6月に「育児・介護休業法」(育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律)が改正され、2022年4月1日から段階的に施行されています。
今回は、改正育児・介護休業法の概要とその背景をわかりやすく解説します。

育児・介護休業法改正の背景

育児・介護休業法改正の背景には、「産後パパ育休制度」の創設などで、男性の育児への参画や女性の就業継続を支援する狙いがあります。

法改正が目指すもの

改正育児・介護休業法には大きく2つの目標があります。

・女性活躍推進
・少子化対策

超少子高齢化社会のなかで、労働人口の不足が問題になっている日本において、女性の労働力の確保は最優先の課題のひとつです。
今回の法改正では労働力の確保と仕事と育児を両立しやすい社会の実現を目指しています。

育休の取得と女性の就業継続状況

現在の社会制度では、妊娠や出産をした女性の就業継続はハードルが高く、多くの女性労働者が仕事を辞めざるを得ない状況にあるのが現実です。
下記表では出産時の就業状態の変化と妊娠・出産時に退職した理由をまとめています。

上図から、女性労働者の約50%が妊娠・出産・育児をきっかけに退職していることがわかります。
また、退職理由を見てみると、ほとんどの女性労働者は、仕事を続けたいにもかかわらず、両立の難しさや時間の不足から辞めざるを得ない状況に追いこまれているのです。

さらに、2020年度の男性の育休取得率12.65%となっており、女性の育休取得率である81.6%とくらべると圧倒的に低く、家事や育児の負担が女性に集中、結果的に退職につながっていることがわかります。
政府は、法改正によって男性の育休取得率を改善し、家事や育児への参画を促すことで、女性の就業継続を支援したい考えです。

改正育児・介護休業法の概要

改正育児・介護休業法のポイントは以下の5つです。

① 「産後パパ育休制度」の創設
② 育児休業の分割取得
③ 育児休業制度などの個別周知と意思確認
④ 育児休業を取得しやすい雇用環境整備
⑤ 有期雇用労働者の育児休業取得要件緩和

新たな制度の導入や制度改正、環境の整備など、その内容は多岐にわたるため、できるだけ早い準備と社内規程の整備が必要になります。
以下では「① 「産後パパ育休制度」の創設」、「② 育児休業の分割取得」について詳しく見ていきます。

「産後パパ育休」の創設と「育児休業の分割取得」

改正育児・介護休業法では、新たに「産後パパ育休制度」(出生時育児休業制度)を創設するとともに、育児休業の分割取得を可能にしました。
どちらも2022年10月に施行されます。

義務の対象は?

「産後パパ育休制度」および「育児休業の分割取得」は、企業規模や業種にかかわらず、すべての企業に義務づけられます。
違反すると、行政からの助言や指導、勧告がおこなわれ、悪質と判断された場合、企業名の公表や過料が課されるなど、企業のイメージ失墜につながる可能性があるため注意が必要です。

改正育児・介護休業法の施行はいつから?

改正育児・介護休業法は3回に分けて段階的に施行されます。

<2022年4月1日義務化(全企業)>
・ 育児休業制度などの個別周知と意思確認
・ 育児休業を取得しやすい雇用環境整備
・ 有期雇用労働者の育児・介護休業取得要件緩和
<2022年10月1日義務化(全企業)>
・ 産後パパ育休制度
・ 育児休業の分割取得
<2023年4月1日義務化(大企業のみ)>
・ 育児休業取得状況の公表

さいごに

改正育児・介護休業法は労働者だけにメリットがあるものではありません。
産後パパ育休制度は分割取得や休業中就業などが可能であり、労働者が柔軟に育児休業を取得してくれる点は、企業にとっても大きなメリットになります。

しっかりと制度変更に向けて準備をおこなうことは、法令違反を犯さないためのリスクヘッジの意味でも非常に重要です。
また、労働者の雇用や育成にかかった投資の回収という観点から見ても、改正育児・介護休業法への取り組みは大きな意味があると言えるでしょう。

続編動画も公開中

<出演>
唐澤崇(株式会社ドクタートラスト シニアコンサルタント)

<参考>
・ 厚生労働省「令和2年度雇用均等基本調査」
・ 厚生労働省「育児・介護休業法について」

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