ブラックホールの撮影に成功 銀河や宇宙の成り立ちを解明する大きな一歩

地球がある天の川銀河の中心に存在すると考えられていた、巨大ブラックホールについてです。5月、日本を含む研究グループが初めて撮影に成功し、その存在が証明されました。研究グループの中心の1人、東北大学でも教壇に立つ天文学者に撮影秘話や今後の展望を聞きました。

6月4日に仙台市天文台で開かれた、ブラックホールに関する講演会。子どもから大人まで150人の天文ファンが詰め掛けました。講師を務めるのは、電波望遠鏡を使った観測が専門の国立天文台の本間希樹教授(50)です。

今回の撮影には、日本やアメリカなど21の国と地域から約300人が参加していて、本間教授はその中心の1人です。
国立天文台本間希樹教授「この真ん中の点が、実は、ほとんどブラックホールのすべてです。(本体は)点なんですね。すべてのものがずぶずぶずぶっと潰れて、点になってしまった状態」
謎に包まれている天体、ブラックホール。撮影に成功したことで、宇宙の成り立ちや人類の起源を解明する大きな一歩だと期待が高まっています。

ブラックホール

東北大学青葉山キャンパス。本間教授は、東北大学でも週に1日教壇に立っています。
国立天文台本間希樹教授「宇宙が進化して(無数の)銀河ができている。天の川(銀河)ができて、その中で星ができて、太陽ができて、地球ができて、私たちが誕生したっていうその一連の中に他の天体が関わっているだろうと。(天の川銀河の)真ん中にいた天体が何なのか。それはブラックホールだっていうことは今回はっきりしたので。間接的に人類につながる、人類誕生にもつながる、そういう成果だったというふうに思ってますね」

地球がある天の川銀河は、太陽を含む星が2000億個ほど集まり、渦を巻いたような構造をしていると考えられています。直径は10万光年。その中心にブラックホールがあるとされてきました。地球からの距離は2万7000光年。質量は太陽の約400万倍です。

ドイツの物理学者アインシュタインの理論により、周囲の物を飲み込んでしまうブラックホールという天体が予想されたのは1900年初頭。2000年前後にはブラックホールの存在が理論的に証明され、研究者3人にノーベル物理学賞が贈られました。

しかし、ブラックホールは極めて重力が強く、物質だけではなく光でさえも吸い込むことから真っ暗で、その姿までは捉えられませんでした。ブラックホールだと断定できないことが天文学・最大の課題でした。
国立天文台本間希樹教授「アインシュタインの理論というのは、基本的にこの宇宙をすべて支配する法則になってますので、その法則が本当に、僕らはそれで正しいのかどうかをちゃんと突き詰めるのは、やはりその宇宙への理解、根幹につながる(課題)」

電波望遠鏡

今回、ブラックホールの撮影のために使われたのが、天体が発する電波を捉えることができる電波望遠鏡です。得られた電波のデータを基に画像化することできます。

ブラックホールは、周りのガスやちりを吸い込む際に電波を発していて、それを捉えることで撮影できると考えました。しかし、これまでは解像度が足りないため、世界6カ所にある8台の電波望遠鏡で同時に撮影。そうすることで、月面にあるゴルフボールを地上から見分けられるほどの高解像度を実現しました。
得られた電波のデータから20万枚の画像を作成。それらを1枚1枚検証して、5年かけて1枚に合成しました。
国立天文台本間希樹教授「その1枚の写真を必死に目指してきたわけですので、それがまさにその(予想)通りの(画像)になって本当に良かった。やった!そういう感じでしたね」

撮影に成功したブラックホールの画像です。電波の強い所は白く、弱い所はオレンジ、出さない所は黒く映ります。ブラックホールの輪郭の直径は6000万キロ。ブラックホールの本体は更に内側にあり、直径は2400万キロです。
国立天文台本間希樹教授「非常に難しかったというのが本音です。相手が高速で動いている。(例えるなら)扇風機が回った状態のまま写真を撮っているわけですので、それをどう補正するのかということで非常に多くのテストが必要だったと」

解明への大きな一歩

謎に包まれたブラックホール。その解明への大きな一歩。今後、研究チームは5年から10年後をめどに、これまでより解析度が3倍から5倍ある電波望遠鏡を載せた衛星を宇宙に飛ばし、更なるブラックホールの観測につなげたいとしています。
国立天文台本間希樹教授「(ブラックホールは)本当に僕ら研究者もそうですし、それから小さい子どもたちから大人までみんなを引きつけますよね。何でもかんでも吸い込んで出さないだとか、近くまで行ったら時間が止まっちゃうとか、どれを聞いてもそんな天体が本当にあるんですかっていうぐらいおかしな性質を持っていて、でもそういうものが宇宙にあるっていう、これがもう宇宙の最大の魅力」

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