今夏の参院選に立候補するのに居住実態は要らない?! オフィス・シュンキ

各種選挙終了後、度々話題になるのが、当該選挙区に「居住実態がないのではないか」という当選者に対する疑義です。

日本国籍を有している、被選挙年齢に達している、といった要件を満たしていれば、地球上どこに居住していても国政選挙の立候補にあたっては問題ありません。そのため、今夏に行われる「参議院議員選挙」で話題になることはないはずです。

しかし現実には、参院選に立候補予定の地方議員が、過去の選挙での「居住実態」が問われるなど意外な形で注目を集めることが起こっています。そこで、今一度、政治家の「居住実態」について私の体験も踏まえ、おさらいさせていただこうと思います。

私自身、「居住実態」の問題には2度、直面しています。一度目は、2015年の統一地方選挙で「京都府京都市西京区」選挙区の京都府議会議員選挙に出る準備をしていた時のことです。

いわゆる《落下傘》候補だった私はこの時、「3か月以上当該選挙区に『居住実態』がないと選挙には出られないから注意するように」と所属政党から伝えられ、前年の10月半ばにそれまでの居住地である兵庫県神戸市長田区から転居しました。

この時「『居住実態』とは寝泊りである」という党からのあいまいな、正誤のはっきりしない指示を守ることに気を付けました。選挙区での地元活動を考えても、投票まで半年を切った段階で神戸に戻る余裕などありません。そこから当選後も含め、当時の家族が住んでいた神戸市で寝泊まりしたのは約4年半で2日のみ。それ以外、管外での政務活動などの外泊を除き、京都市内の自宅、もしくは病院施設で寝泊まりしてきています。

深夜まで阪急電鉄京都線の桂駅に立ち「政務活動」(広報広聴活動)をほぼ毎日行っていたことなどが功を奏してか、上記のような《単身赴任》状態だったにも関わらず、「政務活動費」の不正使用の疑い(行政裁判の末、一切の不正なし、の当方勝訴判決が2021年10月に最高裁で確定)で司法に京都市民から訴えられた時も、「居住実態」については私が問われることはありませんでした。

二度目の「居住実態」への直面は2021年3月25日のことです。この日、大阪高等裁判所で私の政務活動費使用に不正なし、の当方完全勝訴の判決が言い渡されたのですが、同時刻に同じ場所、同じ裁判官の別の案件の判決言い渡しもありました。

メディアやテレビカメラも来ており「また、私狙いなのか」と、うんざりしていたら、違いました。注目されていたのは私でない方。それは、大阪府東大阪市のある議員(当時)の選挙前の「居住実態」についてのものでした。そして、その場に図らずもいた私は、大阪府選挙管理委員会の「当選有効」の決定が、司法によって覆され「無効」となる瞬間を目撃することになりました(のちに、最高裁が上告棄却し無効判決が確定)。「居住実態」の判断を下す行政側と司法側の判断が分かれたケースでした。

自分が実感として知ることを記しましたが、やはりここは国に聞いてみないといけません。総務省自治行政局選挙部管理課に対して「地方選挙の『居住実態』について法令、もしくはマニュアルのようなものはありますか」と電話で聞いてみました。

答えは「『居住実態』に限った法令、マニュアルといったものはありません」とのこと。

同時に、「ガイドラインのようなものもありません。当該の地区の選挙管理委員会の方で、(指摘があった場合)調べて判断されている、ということです」とのことでした。

よくいわれる電気料金、水道代、駐車場の領収書などといった「居住」の証拠も、法や条例のように定まった線引きはない、ということになります。

最近の表面化した大きな例では、2021年1月の埼玉県戸田市機会議員選挙で当選、今年3月に「当選無効」が最高裁判所の判決で確定、失職したスーパークレイジー君(本名・西本誠氏)のケースがあります。このケースは、私が目撃した大阪府選挙管理委員会が問題なしと判断していた東大阪市の件とは異なり、戸田市・埼玉県も「居住実態なし」の判断で「当選無効」としており、司法でも高裁、最高裁と同じ判断が出されたケースでした。それでも、スーパークレイジー君側は記者会見で「納得がいかない」と述べており、法的なガイドラインが明確でないことの弊害は出ていたのではないでしょうか。

ただ、最後に記しておかなければならないことがあります。総務省自治行政局選挙部管理課も共通認識として捉えていること……

「選挙に出る方は当該選挙区で、少なくとも選挙前の3か月間、きちんと寝泊りも含め生活をしてください」

当該地区の議員になることを志すなら当たり前のことだと思うのですが、いかがでしょうか。(オフィス・シュンキ)

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