菅前首相、神奈川県立高での講演中止 参院選目前で批判殺到

菅義偉前首相(資料写真)

 参院選の22日公示が有力視される中、神奈川県立瀬谷西高校(横浜市瀬谷区)が公示目前の13日に菅義偉前首相(衆院神奈川2区)を招き、政治参加に関する講演会を3年生対象に企画していた問題で、同校は8日、講演会を中止することを明らかにした。前首相側が日程の都合で出席できなくなったとしている。

 県教育委員会と同校が開催を発表した翌日の1日以降、中止や延期を求める抗議が電話などで同校に120件超寄せられ、業務に支障が生じていた。同校によると、8日朝に前首相側から申し出があったという。

 講演会は、同校が主権者教育を含むシチズンシップ教育に取り組んできたことから、来年4月に瀬谷高校との統合に伴う記念事業の一環として企画。前首相を招くことは県議から提案され、同校で検討した上で開催を決めたという。

 地域で植栽に取り組んできた経緯から、テーマの一つとして2027年に上瀬谷通信施設跡地で開催予定の「国際園芸博覧会」が検討されていた。前首相は自民党の同博覧会推進特命委で特別顧問を務めている。

 先月31日の発表後、市民団体などから「公示目前に特定政党の政治家だけを招くのは政治的中立の観点から問題」と批判が続出。教育基本法第14条は特定の政党を支持・反対する政治教育を禁じており、識者から「同法に反する恐れがある」と指摘されていた。統合を控えて在籍は3年生(約280人)のみで、選挙権のある生徒の投票行動への影響も懸念されていた。 

 同校と県教委は企画について問題はなかったとの見解を堅持しているものの、「寄せられた意見を真摯(しんし)に受け止める」としている。

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