インディカー、2023年から100パーセント再生可能な燃料を採用

 第106回インディアナポリス500マイルレースの決勝を2日後に控えた5月27日金曜日、インディカーは2023年から採用する新しい燃料に関する発表を行った。

NTTインディカー・シリーズは北米のモータースポーツシリーズとして初めて、2023年からのレースすべてで100%再生可能な燃料を使用する。

 インディカーで現在使用されている燃料はエタノール85パーセント、ガソリン15パーセントのE85で、供給元はスピードウェイというアメリカの石油販売会社だ。これが2023年からはシェルの提供する低炭素燃料へと切り替えられる。

 新燃料は第二世代エタノール。サトウキビ廃棄物から作られるエタノールと、その他のバイオ燃料を混合したもので、これを使うことによって化石燃料であるガソリンを使った時と比べると温室効果ガスの排出は60%も削減されるのだという。

 シェルは2050年までにインディカーでの二酸化炭素排出量をゼロにするという大きな目標も掲げている。

 2023年からのインディカー用燃料を製造するのは、ブラジルのライゼンという会社だ。使用材料のメインはサトウキビ廃棄物。ライゼンはシェルも投資をして2011年にブラジルに設立された。

 彼らはサトウキビからエタノールを製造する会社としては世界最大の規模を誇っており、世界で最初に第二世代エタノール製造工場を作ったことでも知られているという。

 会見でシェルのエンジニアは、第一世代エタノールから廃棄物由来の第二世代エタノールへの移行を“アップグレード”と表現していた。

会見を行うインディカーとシェル

 そのいちばんのメリットは食物連鎖と競合しないことだという。

 彼らは、「新燃料はシボレーとホンダの両エンジンメーカーがダイノ・テストを行っています。私たちの製品は優れた性能と耐久性を彼らに提供することができています。新燃料の仕様はE85燃料に近く、平均オクタン価も100%前後あります」

「燃料を変えることでエンジンの性能がアップするなど、インディカーのパフォーマンスに大きな変化が起こることはないが、CO2排出量は大幅に削減できます」と胸を張っていた。

 なお、インディカーは2023年からエンジンとエネルギー回生システムを使ったハイブリッドパワーユニットを採用する計画だったが、パンデミックの影響を受けて導入は2024年に1年先送りされた。

 100パーセント再生可能燃料は、まずは現行エンジンで使用が始められ、翌年からはよりハイパワーなハイブリッドパワーユニットで使われる。燃料のスイッチがエンジンに問題を引き起こす可能性は、ほとんどないものとインディカー、シェル、そしてエンジン・マニュファクチャラー2社は話している。

伝統のペンゾイルカラーでインディ500を戦ったスコット・マクラフラン

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