ランボルギーニドライバーのル・マンLMP2参戦はLMDhを意識?「僕が決めることではない」とミルコ・ボルトロッティ

 ランボルギーニのNo.1ファクトリードライバーとしてDTMドイツ・ツーリングカー選手権をはじめ、GTワールドチャレンジヨーロッパ/エンデュランス・カップなど数多くのカテゴリーで活躍中のミルコ・ボルトロッティは、6月11〜12日に決勝レースが行われる第90回ル・マン24時間レースに出場している。

 ル・マンでボルトロッティがドライブするのは、チームWRTの32号車オレカ07・ギブソン。つまり、LMP2車両となる。ランボルギーニ使いがプロトタイプカーで耐久レース最高峰へ。念願のル・マン初出場を果たすボルトロッティに、レースウイークを迎える心境や気になる将来について聞いた。

ランボルギーニワークスドライバーのボルトロッティはイタリア籍の32歳

──GTワールドチャレンジのレースを終えて、そのままポール・リカールからル・マンへ駆けつけ、6月5日のテストデーで初めてサルト・サーキットを走行しましたが、いかがでしたか。MB:はじめてこのル・マン24時間レースの場にいられるということにとても興奮しているし、嬉しい。誰もが憧れるように、レーシングドライバーとしていつかはル・マンに出てみたいという夢を長年持ち続けていたので、やっとその機会が巡ってきて夢が叶ったという思いだ。

 いままでのキャリアの中で、さまざまなフォーミュラカーをドライブしてきたけど、LMPマシンでレースに出るのは初めてだ。WRTが(31号車、41号車に次いで)3台目をエントリーすることになり、そのオファーをくれたことはとても光栄に感じている。

 ポールリカールから直接駆け付けたので、トラックウォークができなかったこともあり、テストデーではドライブする中でより多くの情報をトラックから読み取り、素早く自分の身体と脳にインプットしなければならからなかった。トラックリミットが多かったり、小さなマシントラブルが続いたりで、必ずしも存分に周回を重ねられた訳ではなかったが、とても良い機会だったし、初ル・マン走行の喜びを噛み締めながら走った。

 事前にシミュレーターでは何度も走っていたけれど、リアルとはまったく別物なので、どんな状況であれ、自分自身でコースを走ってみて感触を確かめることが重要だった。シミュレーターはレースの準備には良い手段のひとつだけれど、リアルとはまったく別物で、空気や気温を体感しなければいけない。

──毎週末のようにレースで飛び回っていますが、その合間を縫って事前にWRTとともにテストもしていたようですね。MB:アラゴンで半日とポルティマオで2日間、集中的にテストをした。まずはLMP2マシンを理解するためのテストだった。最近はずっとGTカーをドライブしていて、8~9年近くフォーミュラから遠ざかっていた。プロトタイプはこの南欧のテストの際に初めてドライブしたが、すぐにフィーリングをつかむことができた。

──初出場のル・マン、それもランボルギーニを代表するトップドライバーのあなたに期待をする声も多いのではないかと思いますが、今週末の目標は?MB:シーズンを通してエントリーしてこのル・マン24時間に向けて準備を重ねてきたチームに比べて、1戦だけ出場という僕らのマシンは明らかに準備不足であり、現実的にはトップ争いをできるレベルにないことは充分に理解しているので、トップ集団で走るのは非現実だと考えている。

 なので、僕にとってのこのル・マン24時間レースでは伝統あるレースとコース、そしてLMP2マシンを理解し、この栄誉ある場所に居られることに感謝しながら、可能な限り楽しむこと、そして無事にチェッカーを受けられるようにベストを尽くすことが目標だ。

ボルトロッティがDTMでドライブするランボルギーニ・ウラカンGT3 Evo

■WRTにとってもランボルギーニは“新たな選択肢”?

──さまざまな噂があったランボルギーニですが、ようやく公式に2024年からのLMDhプログラムを発表しました。あなたのこのプロジェクトでの役割は?MB:ファクトリードライバーとして、いまはGTでの活動に集中し、ひとつでも多くのポディウムを獲得することを念頭に置いている。ランボルギーニのワークスドライバーとして新LMDhのプログラムにどう関わるのかは、現時点では分からない。複数名いるファクトリードライバーの誰がどのカテゴリーやプロジェクトに配属されるかは、ランボルギーニが決めることであり、僕の立場では決定権はない。

 しかし、ランボルギーニがLMDhプログラムを決断し、今後新たな挑戦をすることはとても嬉しく、その発表は僕にとってとてもエモーショナルな瞬間で感慨深かった。

 LMDhプロジェクトを開始するにあたり、もちろん僕らファクトリードライバーにはその趣旨は事前に伝えられてはいるが、まずはGTでしっかりとランボルギーニの強さとパフォーマンスを示す必要があるので、ファクトリードライバーとしてその課題をまずはこなさないといけない。

──ランボルギーニがここル・マンで活躍したのは、2010年の日本のJLOCが最後で、それ以降は出場していません。もし2024年にあなたがここへLMDhで出場するのならば、14年ぶりにル・マンへランボルギーニが参戦することになります。MB:そんなにランボルギーニはル・マンに出ていなかったのか……。もし2024年に僕がLMDhをここでドライブできるのなら、どんなに嬉しいことか。そうなれるようにまずはDTMやGTWCでしっかり結果を出して、ランボルギーニから新プロジェクトを任せてもらえるようにしなければならない。来年にはランボルギーニから詳細が発表されるので、どのような方向へ行くのか、いまからワクワクしている。

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 ボルトロッティ本人は、あくまでWRTとの友好関係によってこのル・マン参戦が叶ったと繰り返すが、ランボルギーニのLMDhプロジェクトを見越してのLMP2参戦は明らかだと考えられる。

 また、WRT関係者は今回のル・マン24時間にはランボルギーニの首脳陣が訪れるのではないかと予想をしており、現在はアウディのLMDh開発が一時ストップしているだけに、WRTにとってもランボルギーニは将来的な方向性を決めるひとつの選択肢のひとつになり得るかもしれない。

2022年5月、ランボルギーニが公開したLMDhのイメージ

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