リンリン(BiSH)『BiSH presents PCR is PAiPAi CHiNCHiN ROCK'N'ROLL』- 一番カッコいいものにしたい

少しレベルアップしたような感じがしています

――映画を作ると聞かれたときはどう思われましたか。

リンリン:

演技は絶対にできないと思っていたので、拒否反応が凄かったです。タッグを組む監督が誰になるかはあみだくじで決まったのですが、山田(健人)監督だとわかる前は誰かもわからない状態でソワソワしていました。

――『VOMiT』は音楽とダンスで表現されていて6作品の中でも特殊な作品になっています。不安がある中、こういった作品になると聞かれた際に驚きはなかったですか。

リンリン:

山田監督とタッグを組むと決まったときに連絡をいただいて、その時に「私は演技ができません」とお伝えしたんです。その言葉を取り入れてくれたからという訳ではないと思いますが、山田監督はBiSHのMVだけではなくLIVEでの演出もやってくださっている方で、私たちをいつも近くで観てくださっているので私の出来ること・良いところを探してくださって、山田監督の作品世界と上手く合う形を探していただけたんだと思います。

――普段のパフォーマンスを生かす作品にしていただけたんですね。

リンリン:

私たちはLIVEでコントをやるんですけどその時の少ないセリフですら凄く緊張してしまうので、誰かになりきるというのはすごく難しかったと思います。

――現実なのか夢の中なのかがわからなくなる幻想的な作品ですが、世界観について山田監督は本作についてどういったテーマを持っている作品だとおっしゃられていましたか。

リンリン:

“都会に自由を求めてきた女の子が同調圧力に打ちのめされてしまう作品”と伺っています。ダンスを全員で踊りだすシーンなどは同調圧力に飲まれてしまうことを表現していて、言いたいことも吐き出すことができないそういう“VOMiT”な作品だということだと思います。

――新しいダンスにも挑戦されているわけですが、どのように本作のダンスを作り上げていかれたのでしょうか。

リンリン:

本作では初めてコンテンポラリーダンスというものに挑戦していて、Seishiro先生という振付師の方についていただいています。ダンスの指導では指先までの動きを細かく教えていただきました。レッスンの際に先生から「コンテンポラリーダンスには正解はないんだよ。」と言ってくださったので、心が凄く軽くなりました。劇中ではBiSHの楽曲を思い出させる演出もあって、例えば椅子を使うシーンは「FREEZE DRY THE PASTS」を元にしたシーンで、今までの作品を取り入れた形で制作していただけています。いろんな新しい表現方法を教えてもらえて少しレベルアップしたような感じがしています。

――とにかく、カッコいい作品でした。

リンリン:

ありがとうございます。本作の楽曲はyahyel(ヤイエル)のみなさんが書き下ろしてくださったのですが、その楽曲の力でカッコよさも倍増していてさらに壮大な作品になりました。

――コンテンポラリーダンスに挑戦されたということで「新しい表現方法を発見された」ということですが、その点について詳しく伺えますか。

リンリン:

先生からは「何を表現するかを常に意識をもつように」と言われました。例えば「伸ばした指の先にランプがあって、そこに手を伸ばそうとしてるとか。自分の中で設定を考えて表現すればそれが正解。」と教えてくださったのでいろいろと想像しながら踊りました。千鳥足で歩くシーンでは、私はお酒が飲めないので、自分のイメージする酔っぱらいをイメージしてみました。

ぎこちなさがリアルなのかもしれない

――私は職場が歌舞伎町なのでよく酔っぱらいを見かけますが、リンリンさんの千鳥足で歩いている演技はよく見る光景だなと思ってしまいました(笑)。

リンリン:

よかったです(笑)。酔っている人は奇妙な笑みを浮かべているイメージがあったので、そのイメージを取り入れてみました。私はなんでもこなせるわけではないので、その固い感じ・不慣れな感じがこの作品の歪んだ世界と合っていたのかもしれないですね。経験を積んで演技ができるようになると逆に難しくなることもあるので、いましかできないことを表現できたと思っています。

――おっしゃる通り『VOMiT』はリンリンさんの今現在の魅力を最大限発揮する作品になっていて、山田監督をはじめとしたスタッフやSeishiro先生、ダンサーのみなさんとも含めたチーム全体の化学反応が起きていたのが素晴らしかったです。

リンリン:

ありがとうございます。

――この作品は言葉で説明するとどうしても陳腐になってしまうので、実際に観て・体感して作品に対して自由に感じてもらうのが一番ですね。

リンリン:

そうですね。観て聴いて楽しんでほしいです。

――本当に映像と音楽が綺麗なので、映画館で見るのに映える作品だなと思っています。

リンリン:

暗い世界に行ったり、明るい世界に出たりしてますよね。シーンに合わせた場面展開も楽しんでいただきたいです。

――本当に画としても綺麗で面白かったです。変な質問で申し訳ないのですが、作中で出てきた牛は本物なんですか。

リンリン:

本物です(笑)。私は動物が凄く好きなので、嬉しい気持ちを表に出さないようにするのは大変でした。

――どのシーンもそれぞれに特徴的でしたが、撮影現場で印象に残っていることはありますか。

リンリン:

こんなに長い間で自分メインの映像作品を撮ることは初めてだったので、毎回怖かったです。

――堂々とされていたのでそんなことは全く感じませんでした。

リンリン:

本当ですか、良かったです。個人的には自分が好きなダークな感じの作品世界だったので、そういった世界に入れたことは楽しかったです。

――改めてご自身の作品を観られていかがでしたか。

リンリン:

ダンスのところは悔しいなと思うところもあります。ですが、そのぎこちなさがリアルなのかもしれないですね。

気持ちが一つになってできた作品

――言語を選ばずに楽しむことができるので、より多くの方に楽しんでもらえる作品になるのではと思っています。説明はほぼない作品ですが観ていてガッと心を掴まれました。

リンリン:

やった!この作品を観ていただいたみなさんもそうなってもらえると嬉しいですね。

――タイトル『VOMiT』の意味するように、作中では本当に吐いているシーンもありましたね。

リンリン:

あれは作ってもらった吐瀉物なんですが、それで吐く練習をさせてもらいました。その時に山田監督ももらいゲロをしそうになっていたので面白かったです。

――演技も大丈夫じゃないですか(笑)。

リンリン:

どうでしょう(笑)。最初は本当に不安しかなくて、タッグを組む監督が話もできない怖い方だとどうしようとも考えていました。撮影を終えて映画が完成した今は、何でもやってみたいなと思っています。

――そういう面でも殻を破ることができたんですね。

リンリン:

そうですね。本作ではさらに嬉しいこともあって、本当に幸せな作品になっています。

――それは何ですか。

リンリン:

私はファッション系のお仕事もさせてもらっているのですが、そのきっかけを作ってくれたスタイリストの友達に私の衣装をコーディネートしてもらっています。いつか恩返しをしたいと考えていたので、本作で恩返しができたので嬉しいです。

――リンリンさんと作品を作り上げようという方たちが集まって、だからこその一体感でこの作品ができたんですね。

リンリン:

私は「6作品の中で一番カッコいいものにしたい。」と言っていたので、みなさんともその気持ちが一つになってできた作品になっていると思います。『VOMiT』はyahyelさんがカッコいい曲を書き下ろしてくださって、山田監督の幻想的で綺麗な映像も合わさって本当にカッコいい作品になっていると思います。そんな綺麗な映像と音楽をでっかい映画館のスクリーンで体感してほしいです。

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