昼食を買い求める客の対応が一段落した午後2時半ごろのことだった。何度か買い物に来たことがある男性が店内に入ってきた。
「いらっしゃいませ」
レジから眺める光景はいつもと同じだったが、違ったのは、その手に5万円を握りしめ、男性が「電子マネーカードを下さい」と言ったことだった。
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セブンイレブン横浜二俣川2丁目店(横浜市旭区)の店長三村勇貴さん(27)=同区=は不信感を募らせた。店にある電子マネーの上限額5万円を、高齢の男性がいきなり買うものなのか─。しかもそもそも買い方が分かっていない。男性は電子マネーの商品を持たず、レジに直接来たのだ。
三村さんは思い出した。今年1月に同じ手口の詐欺が自分の店であり、その際、詐欺被害を防いだことがあったのだ。
「失礼ですが、用途をお聞きしてもいいですか?」
「パソコンが壊れた。直すために電子マネーが必要なんだ」
三村さんはすぐに詐欺だと直感した。5分ほど男性と話す間に旭署へ通報した。男性は「早くしてほしい」と焦っていた。「セキュリティーのアップデートが必要だとパソコンの画面に表示された。そこにあった電話番号に掛けたら電子マネーカードを買ってくるように言われたんです」
三村さんは詐欺だと気付きつつも、「大丈夫です。警察の方と一緒に話をしてみましょう」と男性を落ち着かせた。
駆けつけた署員と一緒に店舗のバックヤードへ移り、3人でまた話をした。男性は自分がだまされていると信じられないといった顔をしていたが、徐々に状況を理解していった。三村さんの機転が功を奏した。
「払わずに済んだ。ありがとう」
男性はそう言って帰っていった。
三村さんは「ここでは詐欺を起こさせない」と、今日も目を光らせている。
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詐欺を防いだとして、神奈川県警旭署は9日、三村さんに感謝状を贈った。