幻想的な惑星状星雲のクローズアップ。ハッブルが撮影した「亜鈴状星雲」

【▲ 惑星状星雲「M27(亜鈴状星雲)」のクローズアップ(Credit: NASA/ESA and the Hubble Heritage Team (STScI/AURA); Acknowledgment: C.R. O'Dell (Vanderbilt University))】

こちらは「こぎつね座」の方向約1200光年先にある惑星状星雲「M27(Messier 27)」のクローズアップです。M27は筋力トレーニングで使われる鉄アレイ(鉄亜鈴、ダンベル)にその姿が似ているとして「亜鈴状星雲(Dumbbell Nebula)」とも呼ばれています。画像の色は元素の分布を示していて、青は酸素、緑は水素、赤は硫黄と窒素に対応しています。

惑星状星雲は、超新星爆発を起こさない比較的軽い恒星(質量は太陽の8倍以下)が進化する過程で形成されると考えられている星雲です。太陽のような恒星が主系列星から赤色巨星へ進化すると、外層から周囲へとガスが流れ出るようになります。ガスを失った星が赤色巨星から白色矮星へと移り変わる段階になると、星から放射された紫外線によって周囲のガスが電離して光を放ち、星雲として観測されるようになるのです。

【▲ M27(亜鈴状星雲)の中心付近へズームイン(動画)】
ハッブル宇宙望遠鏡や地上の望遠鏡を使って撮影されたM27の画像が使われている。
(Credit: NASA and L. Barranger (STScI/AVL))

フランスの天文学者シャルル・メシエが1764年に発見したM27は、最初に見つかった惑星状星雲でした。このタイプの星雲は昔の望遠鏡では惑星のように見えたことから、その名残りとして今でも“惑星状”星雲と呼ばれています。

死にゆく恒星が生み出した惑星状星雲は、宇宙の長い歴史の中では短命な天体です。白色矮星に進化した星の表面温度は徐々に下がっていき、紫外線が弱まることでガスの輝きも失われていくからです。惑星状星雲を作り出す恒星の寿命は3000万年~100億年であるのに対し、惑星状星雲の寿命は約2万年とされています。

冒頭の画像は「ハッブル」宇宙望遠鏡に搭載されていた観測装置「広域惑星カメラ2(WFPC2)」による観測データ(可視光線のフィルター5種類を使用)をもとに作成され、2003年2月10日付で公開されたもので、NASAのハッブル宇宙望遠鏡Twitter公式アカウントが2022年6月1日付で改めて紹介しています。

関連:地上の望遠鏡が撮影した2400光年先の惑星状星雲「EGB 6」

Source

  • Image Credit: NASA/ESA and the Hubble Heritage Team (STScI/AURA); Acknowledgment: C.R. O'Dell (Vanderbilt University)
  • NASA/STScI \- Close-Up of M27, the Dumbbell Nebula
  • NASA \- Messier 27 (The Dumbbell Nebula)

文/松村武宏

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