安全性を理由にインディ500に消極的なのは「ある種の言い訳」と優勝経験者で元F1ドライバーのロッシ。一方で危険性も認識

 インディカーのドライバーであるアレクサンダー・ロッシは、マックス・フェルスタッペン(レッドブル)が安全上の理由からインディ500に出たがらないのは、“一種の言い訳”だと述べている。

 第106回インディアナポリス500はF1第7戦モナコGPと同じ日に開催され、一部のF1ドライバーたちは、インディカーの最高峰レースに参戦することに興味があるか尋ねられた。

 レッドブルのセルジオ・ペレスとフェラーリのカルロス・サインツは、インディカーでレースをするチャンスがあっても見送るという。またフェルスタッペンも、モナコGPとル・マン24時間レースと並んでモータースポーツの3冠のひとつとなっている、最高のショーであるインディ500への挑戦には気乗りがしないようだった。

「3冠を追いかけたいとはまったく思わない。少なくともインディカーではね」とフェルスタッペンは語った。「あそこで命の危険を冒し、足なんかを怪我したりする必要はないと思う……」

2022年F1第7戦モナコGP マックス・フェルスタッペン(レッドブル)

 ロッシは2015年にマルシャからF1に参戦し、アメリカに戻った2016年にインディ500で優勝したが、F1ドライバーたちの反応に驚かなかった。

「僕も同じようなものだった」とロッシは『Sky F1』の番組『Any Driven Monday』で語った。

「F1で軌道に乗り、自分の世界がF1を中心に回っているときは、ある意味残念な状態ではあるが、他のレースは自分にとって存在しないかのようなものだ」

「F1に到達するためには、一本の道だけに集中するんだ。僕も同様だった。インディ500が何かは知っていたが、特に気にしていなかった」

「でもその後インディに出るチャンスに恵まれると、それは実際に信じられないくらい特別なイベントなんだ」

「モータースポーツだけでなく、世界的に見ても、1日で開催されるスポーツイベントとしては地球上で最大のものだよね? だからインディで戦うチャンスがあるということは……」

2015年F1第18戦ブラジルGP アレクサンダー・ロッシ(マノー・マルシャ)

 ロッシは、フェルスタッペンが示唆したとおりインディカーの危険性を認めた。しかしロッシは、フェルスタッペンが安全性を根拠にしたのは、口実に過ぎないと考えている。

「ある意味では、より危険かもしれない。でも僕たちは4回クラッシュしたけれど、どのマシンも真っ二つにはならなかったよ」

「モナコGPはそうではなかったよね? 安全性を根拠にしたのは、ある種の言い訳だと思う」

 例としてロッシは、アンドレッティ・オートスポートでのチームメイトであるロマン・グロージャンに言及した。グロージャンは2020年のF1バーレーンGPで凄まじいクラッシュを経験したものの、インディカー参戦のためにアメリカへ行ったのだ。

「ロマンはこの話をするのに適任だと思う」とロッシは述べた。

「言うまでもなく彼は数年前にとても劇的で恐ろしいインシデントに遭った」

「彼は将来何をするかにあたって、長いことじっくり考えた。そして新たなマシンによってモータースポーツとレースへの情熱を取り戻したと話してくれた。彼は走行中も完全に安全だと感じている」

「結局は相対的なことだ。だからああいう回答に僕は驚かないよ。でも彼らに賛成しているというわけでもない」

第106回インディアナポリス500マイルレース アレクサンダー・ロッシ(アンドレッティ・オートスポート)

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