「国が亡びる兆しだ」北朝鮮で”子ども窃盗団”が急増

前年に収穫した食糧が底をつく春窮期を迎え、深刻な食糧難に襲われている北朝鮮。

人々の期待が大きかった麦は、肥料不足と少雨のせいで期待ほどの収穫が望めなくなり、現在行われている「田植え戦闘」も、昨年と比べて大幅に遅れているとの分析が示されている。

そんな中で、人々が期待しているのは、まもなく収穫が始まるジャガイモだ。気候的に稲作ができない地域でも古くから栽培され、人々の主食となってきたジャガイモだが、最近になって盗難が相次いでいるという。米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じた。

平安南道(ピョンアンナムド)の情報筋によると、徳川(トクチョン)ではジャガイモの収穫を目前に控え、毎夜のようにジャガイモ泥棒が現れ、人々が神経を尖らせている。

食糧難を解決するとして人々の期待を集めているジャガイモだが、夜の間に盗まれてしまい、涙を流して悔しがる農民もいる。盗難防止のために警備を強化している中、犯人が捕まった。

「私も自分のトッパッ(個人耕作地)のジャガイモを一部盗まれ、あまりにも頭に来て、家族が交代で夜の警備に当たっていたところ、畑に忍び込んできた泥棒の一味を捕まえたが、8歳と9歳の子ども5人で、言葉を失った」(情報筋)

子どもの泥棒と言えば、コチェビ(ストリート・チルドレン)の可能性もあるが、どうやら必ずしもそういうわけではないようだ。

中国との国境に近い塩州(ヨムジュ)でも、食糧が底をついた「絶糧世帯」が増えていると伝えた平安北道(ピョンアンブクト)の情報筋も、個人耕作地でジャガイモやニンニクが盗まれる事件が頻発していると伝えた。

住民は、大切な糧を盗まれまいと夜間警備に当たっているが、町内の複数箇所で捕まった泥棒は、いずれも9〜10歳の子どもで、驚きを隠せずにいるという。

捕まった子どもたちは、親もいて家もあるが、親が食べ物を確保できず、空腹に耐えかねて、ジャガイモやニンニクを盗んで、生で食べたり、市場で売って得た現金で食べ物を買っているのだという。

1990年代後半の大飢饉「苦難の行軍」のときに見られたような光景が再び現れるほどの状況に、住民は「国が滅びる兆し」だと嘆いているとのことだ。

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