国内3例目の馬具と判明 壱岐・久保頭古墳出土「日韓交流知る貴重な資料」

久保頭古墳から出土した馬具「複環式鏡板付轡C類」

 壱岐市教委は9日までに、同市芦辺町湯岳興触の久保頭(くぼがしら)古墳で昨年度出土した馬具の鉄製轡(くつわ)が、「復環式鏡板付轡(ふっかんしきかがみいたつきくつわ)C類」と判明したと発表した。国内では群馬、京都に次いで3例目。東北アジアで9例目。朝鮮半島で多数出土しており、調査した市教委社会教育課の田中聡一課長補佐兼係長(52)は「日韓の交流関係を知る中で貴重な資料」としている。
 同古墳は2020年度に新たに発見された遺跡として登録された。発見時、墳丘の裾部が削られ、玄室の天井石など石材が失われていたため、市教委が構造や造営時期などを調査。その結果、直径14メートル以上の円墳の可能性が高く、玄室と前室で構成し、その全長は約6.8メートル。6世紀末から8世紀初めまで祭祀(さいし)が行われたことが確認された。
 轡は馬の口に取り付け、手綱を付けるための道具。前室入り口の左側門柱石の前室内で出土し、さびに覆われていたため県埋蔵文化センターの協力でエックス線写真を撮影したところ、特異な形状の鏡板が付いた轡と判明。馬具を研究する福岡大人文学部歴史学科の桃﨑祐輔教授に照会し、複環式鏡板付轡C類だと分かった。
 壱岐は、同C類が出土した京都の船山古墳と韓国南部の大伽耶(だいかや)地域(当時)の間に位置。桃﨑教授は、船山古墳がある丹後半島周辺は物部氏系氏族の移住が確認されており、轡は実用馬具として物部氏系氏族の韓国南部への往来の中で搬入された可能性が高いと推測している。


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