メガバンク出身市長VS市議会 “議員定数半減案“に至るまでのヒストリー 人口2万7000人の小さな街で…

人口およそ2万7000人…。広島県北部の小さな街で、2年前「若い力」に対する大きな期待を背負って就任した石丸市長…。

市長が提出した“議員定数半減”案は、10日の議会で否決されました。議会側との対立は長期化しています。これまでを振り返ります。

RCC

安芸高田市の石丸伸二市長は、前の市長が、河井夫妻による大規模買収事件で現金を受け取ったことを認め、辞職したことに伴う市長選挙に立候補、2020年8月に初当選しました。

石丸市長は京都大学を卒業後、三菱UFJ銀行で、金融市場のアナリストなどを勤めました。

市議会の所信表明演説では、新型コロナなどへの危機対応や、ICTを活用した教育の推進などで、「世界で一番住みたいまち」を目指すと意気込みました。特に強調していたのは、「財政の健全化」で、「行政のスリム化を進めつつ、未来への投資を拡大していく」と訴えました。

「見ている人の興味をどれくらい引けるか。これに尽きる」政治に関心の薄い若者を中心に興味をもっておらおうと、就任当初から力を入れていたのは、「SNS」です。石丸市長は、ツイッターで、市政の情報を盛んに発信しています。そんなある日、ふとつぶやいたツイートを巡って、議会との論争が勃発しました。振り返ってみると、これが議会との確執を生んだ発端でした。

それは、市議会でのことです。「いびきをかいて、ゆうに30分は居眠りをする議員が1名。『市民の関心により生まれる政治の緊張感』がまだまだ足りないという証左なのか」とツイッターに投稿。その6日後にも、このようにつぶやきました。「議会から異例の呼び出しを受けました。数名から、議会の批判をするな、選挙前に騒ぐな、事情を補足してやれ、敵に回すなら政策に反対するぞ、と説得?恫喝?あり」。これらの投稿は、県内だけでなく、全国で大きな波紋を呼んだのです。怒りの矛先は、議会だけでなく、石丸市長のもとにも多く寄せられたといいます。

「この現状を市民に伝える必要があった」との石丸市長の考えに対し、当時の山本優議長は、「居眠りをした議員には厳重注意したが、体調不良も原因だった」としたうえで、「議会のことだったら書かれる前に相談を受けたらよかった。お互いが前に進めていかないといけない」と弁明しました。また、恫喝をめぐる問題について、その後、全員協議会が開かれました。議会が回答した作成書によりますと「威圧的な発言はなかったと全議員が確認した」と結論付けられました。

石丸市長が就任してから3か月後、市議会議員選挙が行われました。このときは、40代の新人がトップ当選を果たすなど、市政に新しい風を起こしてほしいという市民の大きな期待が伺えました。

安芸高田市は現在副市長が1人ですが、2021年1月、石丸市長は、2人目の副市長を公募すると発表。記者会見で求める人物像について「市政の発展を支え攻め要を担ってもらいたい」と述べました。転職サイトを通じて公募した結果、想定よりはるかに上回る4115件の応募が集まり、選考の結果、災害復興支援などに取り組んでいる一般社団法人の女性職員が選ばれました。石丸市長は、市議会に議案を提出。議会の同意を求めました。

しかし、市議会議員の意見は、真っ二つに割れました。反対議員の多くは「新型コロナでの財政難」を理由に挙げました。副市長人経費は、年間で1200万円かかることを挙げた議員が多くいました。採決の結果、「賛成7人・反対8人」で否決されました。迎えた2度目の再提案。石丸市長は、「アフターコロナを見据えた体制を整える」として、改めて必要性を強調しました。しかし、前回は賛同していた議員からも、「この方が活躍できる環境を整えるのは、当然の責務、議会で賛否が拮抗するようでは、環境づくりに責任を果たしたとは言えない」などと反対意見が出されました。2度目の採決も、「賛成5人・反対10人」とまたもや否決されました。

その後石丸市長は、議決で反対した議員のなかに、候補者に関しては、「問題ない」と主張するなど討論に多くの矛盾がみられると指摘…。さらに、ほかの議員との関係性から賛成できなかった市議がいたなどと、議決に違法性があったとして、やり直しを求めました。ただ、議員からは、「客観的根拠がない」などの意見が聞かれ、「賛成1・反対14」と、2人目の副市長案は、3度目の白紙となりました。

一方議会側は、2022年3月、2人目の副市長の人件費を削減した当初予算案を全会一致で可決しました。

そして、きょう(10日)を迎えます。石丸市長は市議会定例会で「抜本的な財政健全化の必要性と市民の評価。議員定数を16とする必要性・正当性がないと判断した」として、「議員定数半減」案を提案したのです。

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