ペルーの自社農園産カカオで作ったチョコレートの新商品 ショコラティエ・辻口博啓さん、特注の焙煎機器も使用【にっぽん食べ歩き】

「TABLETTE DE CHOCOLAT」のパッケージ

 日本のスイーツ界の先端を走るパティシエ・ショコラティエの辻口博啓さんが、ペルーにある自社農園産カカオなどを使った新商品「TABLETTE DE CHOCOLAT」12種類の販売を始めた。ペルーのほか、ベネズエラ、マダガスカル、ベトナム、タンザニアなど産地ごとに異なるカカオの味わいを楽しむことができる。(共同通信=中村彰)

焙煎機などの説明をする辻口博啓さん=埼玉県吉川市

 カカオ農園からチョコレートとして完成するまで一貫して手がけるので「FARM to BARショコラブティック」と名付け、直営の「LE CHOCOLAT DE H(ル・ショコラ・ドゥ・アッシュ)イオンタウン吉川美南店」(埼玉県吉川市)に特注の焙煎(ばいせん)機器を設置した。

12種類の「TABLETTE DE CHOCOLAT」

 「自分で農園を持ち、発酵を管理してチョコレートを作りたいという思いが体の中を駆け巡っていた」と辻口さん。その夢が目に見える形になった。
 産地で収穫され、発酵、自然乾燥を経たカカオは船便で日本に運ばれる。店では温度18―20度、湿度91%で保管。手作業で選別し、カカオ豆の特長に合わせた風量や火力で焙煎する。熱源を電気ではなく高圧ガスにしたのは辻口さんのこだわりだ。
 その後、豆を20マイクロメートルの大きさに粉砕。機械で外皮とニブと呼ばれる可食部分に分離する。機械では取り切れない外皮があるので、また手作業で不要な部分を取り除く。さらにニブと粉糖などをまぜ滑らかに加工する。

外皮の分離機とスタッフ=埼玉県吉川市

 ペルーの自社農園のカカオで作った製品は、同国北部のホワイトカカオ、中部の希少種「アマゾン・ナティーボ・クリオロ」、南部山間部のこれも希少種の「チュンチョカカオ」のものなど4種類。
 ホワイトカカオはベリーを中心にかんきつ系の酸味を加えた味わいで、ほのかにハーブの香りが漂う。中部のものはかんきつに加えナッツの味が広がり、シナモンのようなスパイシーな余韻も。南部産にはマンゴーなどトロピカルフルーツのニュアンスがあり、上品な渋みがアクセントになっている。
 ほかの国々のカカオもそれぞれが個性を主張している。ベネズエラのクリオロ種を使った製品はライムを基調にペッパーのような辛みが特長。マダガスカルの渓谷で栽培されたカカオのショコラは酸味プラス土の香りが印象的で重厚な渋みが感じ取れる。

「LE CHOCOLAT DE Hイオンタウン吉川美南店」の店内

 ベトナム産はレモンなどの味をベースにコリアンダーやシナモンの風味が重層的だ。タンザニア産カカオからはラズベリーとクローブなどハーブ系のフレッシュさを感じられた。
 このほか、エクアドル、トリニダード・トバゴ、フィリピン、タンザニアのカカオを使った商品をそろえている。各780円。

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