山姥切国広の所有者、足利市に譲渡意向 130件のメールなど、購入意欲に反響

山姥切国広

 足利市の早川尚秀(はやかわなおひで)市長は10日の市議会全員協議会で、足利で鍛造された国重要文化財の名刀「山姥切国広(やまんばぎりくにひろ)」の所有者が、市への譲渡に応じる意向を伝えてきたことを明らかにした。8日の市議会一般質問で早川市長が購入に意欲を表明したことに対する反響があり、約130件のメールなどが市役所に寄せられ、多くは購入に反対する意見だった。こうした事態を心配した所有者から市へメッセージが託されたという。

 所有者からのメッセージは「山姥切国広を愛して下さっている皆様へ」とのタイトルで「山姥切国広を私達の元で眠らせて置くには存在があまりにも大きくなりすぎていて、正直守り切れなくなっています」とし「手放すのは断腸の思いではありますが(中略)考え抜いた結果、信頼できる足利市にお任せするのが一番良いのではないかと思っております」などと記している。

 全員協議会で早川市長は「こうした丁寧なメッセージをいただき、大変ありがたい。今後のことについては、所有者さまと誠意をもった話し合いの中で詳細を詰めていきたい。足利ゆかりのこの刀を、私は責任をもって後世に引き継いでいきたい」と表明。取材に対し「近いうちに(所有者のところに)ごあいさつに伺いたい」と述べた。

 山姥切国広は刀工堀川国広(ほりかわくにひろ)が1590年、当時の足利城主長尾顕長(ながおあきなが)の依頼で鍛えた。長さ70.3センチ、反り2.8センチ。

山姥切国広の所有者メッセージ全文

山姥切国広を愛して下さっている皆様へ

 ご心配をいただき本当にありがとうございます。

 5年前から、縁あって足利市とお付き合いをさせていただき、いつも誠実に真摯に向き合ってくださり、とても信頼しております。

 山姥切国広を私達の元で眠らせて置くには存在があまりにも大きくなりすぎていて、正直守りきれなくなってきています。

 手放すのは断腸の思いではありますが、保管されている場所は私達も見学させていただきましたが、湿度、温度管理、セキュリティもしっかりされていて、とても居心地が良さそうでした。

 考え抜いた結果、信頼できる足利市にお任せするのが一番良いのではないかと思っております。

 今後、山姥切国広が幸せになり、より一層皆様に愛されることを切に願っています。

                                 持ち主

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