全世界の人に電気を 発電インク実用化へ会社設立 小山

「発電インク」を塗ったパネルを持つ下山田社長(右)と加藤教授=小山市

 物に塗ると光に反応して電気を作り出すインク「発電インク」の開発を手がけるベンチャー企業が今春、栃木県小山市東城南4丁目に設立された。社名は「ソーラーパワーペインターズ」。下山田力(しもやまだちから)社長(42)と、会長を務める小山高専機械工学科の加藤岳仁(かとうたけひと)教授(43)が共同で開発を進める。低コストや手軽さが特徴で、2028年ごろの実用化を目指している。

 2人は茨城高専時代の友人。卒業後、下山田社長は農業、加藤教授は塗布型発電体の研究に取り組んできた。東日本大震災時の停電や農業経営を通じ、電気の重要性を痛感し、これまでも共同で発電に関わる事業を手がけたという。

 加藤教授が開発した発電インクの実用化を進めようと、3月に同社を設立した。2人を含めた4人体制で、日本政策金融公庫と足利銀行が創業資金計1200万円を協調融資する。

 発電インクは、半導体と金属両方の特性を持つ物質と、電気伝導性の高い高分子化合物で作る。研究レベルでは既に完成している。

 同社によると、あらゆる材質や形の物体に1回塗るだけで発電が可能。一般的な太陽光パネルと比べコストを1割以下に抑えられるほか、環境負荷も低減できるという。赤っぽい色で、透過性は高く、窓ガラスやビニールハウスなど多様な活用方法を視野に入れる。

 既に那須塩原市内の農家のビニールハウスで試験的に導入し、耐久性などで成果を上げたとしている。

 今後は全国の高専や学生とも連携し、需要に応じた発電出力やインクの透過性などを追求していく。

 2人は「今までの概念を覆す可能性がある。海外では電気が使えない生活もある。全世界の人に電気を届けたい」と話している。

 

実用化を目指す「発電インク」

© 株式会社下野新聞社