琵琶湖で外来種アカミミガメ急増、漁業者は悲鳴 滋賀県が駆除しない理由とは

琵琶湖沿いの殿田川河口で木の板に乗り甲羅干しする大量のアカミミガメ(滋賀県草津市新浜町)

 生態系への影響が深刻な外来種として「特定外来生物」への指定が想定されているアカミミガメ(ミドリガメ)が滋賀県の琵琶湖やその周辺域で増えている。漁業者からは「漁具にかかり漁業の妨げになる」として早急な駆除を求める声が上がっている。

 スッポンやウナギのはえ縄漁に取り組む漁師横江拓郎さん(40)=大津市=は「はえ縄を仕込むと、針の7割にアカミミガメがかかっていることがある。ここ10年ほどで生息数が急増した」と話す。

 スッポンとアカミミガメはともに水深2~3メートルの浅瀬の砂地に生息するため、はえ縄を仕掛ける場所を変えることは難しい。捕獲したカメを湖に逃がす作業にも手間を取られるという。

 米国原産のアカミミガメは、1950年代後半から「ミドリガメ」の通称でペットとして大量に輸入された。繁殖力が強く、遺棄され野生化したアカミミガメが全国で増加し、問題化している。

 5月に「特定外来生物」指定を前提とする改正外来生物法が成立し、来年にもアメリカザリガニとともに政令で指定する見込みとなった。販売や野外への放出は禁止されるが、従来の特定外来生物と違い、飼ったり譲渡したりすることは認める。環境省は「長期的に個体を減らしたいが、今の飼い主は飼育を続けてほしい」とする。

 同法では指定生物が「生態系などに被害が生じるか、生じる恐れがある場合」に国や自治体が駆除すると定められている。県は琵琶湖や周囲の河川でアカミミガメが増えていることは認めながらも、人員や予算に限りがある中で、ブラックバス、ブルーギル、オオバナミズキンバイの駆除を優先するべきとの姿勢を示す。

 県自然環境保全課は「アカミミガメは在来魚を捕食する訳ではなく、急いで駆除に取り組む事態ではない」と説明する。駆除するとしても、捕獲方法の検証や分布状況の把握などの準備が不足しているという課題がある。

 駆除を巡る現状に、横江さんは「はえ縄漁をしている人は県内に10人もいないので、行政に声が届きにくい」と嘆く。駆除すると決まった場合に作業を担うのは漁師だが、「高齢化が深刻で、今やらなければ今後はさらに人員確保が難しくなる」と心配する。

 県漁業協同組合連合会によると、エリ漁でもアカミミガメ混獲の被害が報告されている。特に浅瀬が広がる南湖の漁師から「駆除対象にならないのか」との相談が寄せられるといい、澤田宣雄専務理事(63)は「県は、少なくとも漁師が捕獲した個体を回収する体制を整えてほしい」と願う。

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