福井の大学生が仲間に語った意外な話…議員や経営者は大歓迎 「若者は無関心」じゃないかも

あわラボの仲間と「政治」をテーマに話し合う見神昂大さん=福井県のあわら市新郷小学校
新科目「公共」の授業をする小島はるか教諭。この日は18歳成人についても触れた=2022年4月、勝山高校

 2022年3月、福井県あわら市で立ち上がったまちづくりグループ「あわラボ」。10、20代の若いメンバーの興味関心を出発点に、40代の社会人メンバーがサポート役になって実践につなげるスタイルで活動している。

 6月3日夜、福井工業大学2年の見神昂大さん(19)=あわら市=が、仲間に語ったテーマは「政治」だった。「自分自身まだまだ政治を知らない。だから同世代を含めて、市民みんなにもっと知ってもらいたい」。選挙とイベントを絡めて「まつりを楽しむように投票所に来てもらえないか」というアイデアもある。

 小学生のころ、北陸新幹線の芦原温泉駅開業が決まり、自分のまちがどう変化していくのか気になった。中高生になると、駅周辺のまちづくりに対する市長の政策が知りたくてホームページなどを調べるようになった。身近な課題に目を向けると、政治に対するハードルが下がった。

 あわら市議、旅館経営者、歯科医ら40代メンバーは見神さんの意見を大歓迎。「政治は特別じゃない。自分たち年上の世代が、政治は生活に身近なものだと“翻訳”して若い世代に伝えることがもっと必要なのかも」と議論が弾んだ。

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 今夏の参院選について、見神さんは「国政は少し遠い印象」と素直に語る。一方で、手にしている一票の重みも感じている。「投票に行かないという選択肢はないです」

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「今の生活に不満がないから選挙は行ったことない。政治は誰かがやってくれるならそれでいい」。福井県内の大学院生の男性(22)のように、政治に無関心な若者は少なくない。

 2016年6月に選挙権年齢が18歳以上に引き下げられて丸6年。前回参院選の19年福井選挙区の投票率は47.64%で、18、19歳は27.24%(抽出調査)にとどまった。これに対し、直近の国政選挙の21年衆院選小選挙区の県内投票率は57.77%、18、19歳は45.81%(同)。全体の投票率の伸び幅10.13ポイントに対し、18、19歳は18.57ポイントと大幅に上回った。

 18歳選挙権が初めて実現した16年参院選から下がり続けた18、19歳の投票率が、上昇に転じたのも初めて。「若者は政治に無関心」とは言い切れない状況が生まれつつある。福井県選管は「18歳選挙権が適用され、中学、高校を通じた主権者教育が浸透してきているのでは」と推測する。

 勝山高校の小島はるか教諭(35)=地歴・公民科=は「中学から学んできた投票する権利を、将来や世の中の在り方に対して多感な高校3年生のうちに実際に行使できる経験が大きい」と話す。「18歳選挙権」適用前の若者たちは、中高で公民を学んで社会や政治に対する関心が高まっても、大学4年間の“空白”で薄まり、投票につながっていないのでは、と感じている。

 高校では今春から、主権者教育に力点を置く新科目「公共」が必修となった。従来の「現代社会」をベースにしつつ、生徒同士や社会人講師らとの議論を積極的に導入するなどして学びを深めることが求められている。小島教諭は「教員が授業の在り方に悩むケースはあるだろうが、本質は生徒たちが社会の一員としてどう関わっていくかを考えていくこと。そこは変わらない」と強調する。

 18歳選挙権に加え、今春から成人年齢も18歳に引き下げられた。今春まで福井弁護士会法教育委員長を務めた後藤正邦弁護士(47)は今年2月、地元の福井市東郷地区で有志と「18歳成人式」を開催。大学進学や就職を控えた世代に、大人の自覚を持つ大切さを伝えた。7月10日投開票が想定される参院選を前に、後藤さんは「今回の選挙は、18、19歳で成人という立ち位置になった人が相当程度含まれる。これまでの主権者教育の効果が改めて試される」と注目する。

 年上の世代が若者たちにどう向き合うかも問われるという。「若者の意思決定を一人の大人として尊重する意識が重要。簡単に否定しては『自分たちは結局、社会に対して何を言っても仕方ない』となってしまう」。会社や家庭で若者の意見が取り入れられ、「自分たちは社会の役に立っている」という成功体験を少しずつでも積み重ねることが、投票率の向上につながると期待している。

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 改正民法が施行され、成人年齢が20歳から18歳になった。当事者世代のオトナ像や「18歳成人」を取り巻く課題を考える

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