EAサッカーゲーム『FIFA』が終了 新ブランド『EA SPORTS FC』とは?

アメリカのゲーム会社エレクトロニック・アーツ(Electronic Arts:EA)は、同社の人気サッカーゲーム『FIFA』をリニューアルし、新たなフランチャイズ名を『EA SPORTS FC』にすると発表しました。詳しい内容は2022年7月にお披露目予定。

『FIFA』シリーズは『FIFA International Soccer』(1993年)から約30年間続いたサッカーゲームの長寿タイトルですが、EAがリリースする最後のエディションは『FIFA 23』。2022年の秋頃にリリースされると見られていますが、有終の美を飾るべく開発にも熱が入っている模様です。

『FIFA』シリーズは、これまでに約20の言語に翻訳され50ヵ国以上で3億部以上の販売実績があり、過去20年間に200億ドル(約2兆円)以上を稼ぎ出したと言われています。

当初2022年のカタールでのワールドカップ後に終了する予定だった契約は、若干延びて翌23年の夏に予定される女子ワールドカップまでとなりました。それ以降にEAはFIFAブランドを利用することができなくなります。

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高額の契約料と独占条項の撤廃がネックになり破談

世界最大のスポーツであるサッカーの統括団体だけに、ライセンス料も高額。

かねて契約の交渉が難航していることが伝えられていました。交渉は、2年間にわたり続きましたが平行線。

国際サッカー連盟が現行のネーミングライツ契約料の2倍以上を要求したことが破談の原因だと『The New York Times』は伝えています。

現行の契約は、約10年前に締結されましたが、国際サッカー連盟は、年間ライセンス料を現行1億5000万ドル(約150億円)の2倍以上、4年間で10億ドル(約1000億円)を要求。また、独占契約の条項を撤廃することも求めていたとされています。しかし、EAとしては、世界有数のサッカーゲームに育てたブランド名を他社と共有することは許容できないという立場を貫きました。

EAのアンドリュー・ウィルソンCEOと国際サッカー連盟ジャンニ・インファンティーノ会長が直接協議しても、妥協の糸口は見いだせずに、契約終了する結論に至ったようです。

国際サッカー連盟がこれだけの増額を要求し、破談も意に介さなかった理由には、他のライセンス先の目星がついていることが考えられます。

2022年11月21日に開幕するカタールワールドカップを前に、別のFIFA公認のゲームタイトルをリリースすべく、他のゲーム会社と開発が進められているようです。なお、メジャータイトルのリリースは、2024年に予定しているとのことです。

国際サッカー連盟のインファンティーノ会長は、FIFAブランドを複数のビデオゲームに販売することで収益を増やしたい意向です。同会長「FIFAの名を冠したゲームは正真正銘、本物のゲームです。ゲーマーやサッカーファンにとって最高のものになることを約束します」

新しい『EA SPORTS FC』はどうなる?

EAの『FIFA』プレイヤーは世界に約1億5000万人いたといわれています。『FIFA』と聞くと、若いゲームファンにとっては、スポーツ統括団体よりもEAの稼ぎ頭のゲームタイトルを連想させるほどに社会に浸透していました。

『EA SPORTS FC』になっても、これまでに培ってきたゲームモードという強みは残ります。

ゲーム内にワールドカップやFIFAが管轄するイベントは含まれなくなりますが、チームやリーグとの個別のライセンス契約により、世界的に有名なクラブやスター選手のほとんどは引き続きプレイ可能です。

国際サッカー連盟(FIFA)とのライセンス契約は終了しますが、欧州サッカー連盟(UEFA)や南米サッカー連盟(CONMEBOL)、イングランド・プレミアリーグ、スペイン・ラ・リーガ、ドイツ・ブンデスリーガ、イタリア・セリエA、アメリカMLSなど30のリーグ、100箇所以上のスタジアム、さらには700におよぶチーム、19,000名以上の選手など、他にも数多くのライセンスを保有しています。

これで、ただちにEAのサッカーゲームにおけるライセンスの優位性が大きく揺らぐことはないでしょう。

EAは新たな時代の幕開けで革新を起こす?

『FIFA』ブランドではなくなった後、ゲーム開発はどのように行われていくのでしょうか。これがさらなる飛躍のキッカケになるのか、それとも凋落の始まりになるのか、eスポーツファンならずとも気になります。

EAはFIFAの高額なライセンス料を回収すべく、ルートボックス(ガチャのような仕組み)といった収益モデルの確立に躍起になりました。なお、自分のチームを編成できる機能「Ultimate Team」では2021年に12億ドル(約1200億円)を稼いだと言われています。

一方で、近年のゲームのアップデート内容に満足できずに、遠ざかっているプレイヤーもいるとされています。契約料が減る分、ゲーム機能を大幅にアップデートできるくらい、開発に回す予算的な余裕が出てくる可能性も考えられます。

他方では、ライバルであるコナミデジタルエンタテインメントのサッカーゲーム『ウイニングイレブン』が、基本プレイが無料のまったく新しいブランド『eFootball™』にリニューアルされることが2021年に発表されました。

実はこれが、EAに大きな変化を決断させる理由の一つだった可能性もあるかもしれません。

【まとめ】サッカーゲームの競争が激化することは必至

これまで長年にわたりEAとコナミは、サッカーゲームの開発で熾烈な競争を繰り広げてきました。それに加えて、今後は新たなFIFA公認タイトルが参戦することになります。

がっぷりと三つ巴になるのか、それとも脱落するパブリッシャーが出てくるのか注目です。

一つ言えることがあります。競争の激化でゲーム内容が充実し、ゲームの選択肢の幅が広がるという利点が、プレイヤーにもたらされることでしょう。

EAのパートナー各社は、新たな船出にポジティブなコメント

今回の発表に伴って、EAのパートナーからコメントが寄せられています。

イングランド・プレミアリーグCEO、リチャード・マスターズ氏

「EA SPORTSは長きにわたり、プレミアリーグの価値あるパートナーです。EA SPORTS FCでの新時代にてともに活動を継続していくことをとても楽しみにしています」

スペイン・ラ・リーガ会長、ハビエル・テバス氏

「EA SPORTSは今日そして未来のインタラクティブフットボールの頂点であり、その体現者と言えます。そんな彼らと共に活動ができるのはとても光栄です、その関係はこれからも含め20年以上続いていきます。」 「EA SPORTS FCとのパートナーにより、来る年に全世界にて革新的でオーセンティックな経験を提供し、フットボールへの愛をともに育んでまいります」

ブンデスリーガCEO、ドナタ・ホプフェン氏

「EAとは素晴らしいパートナーシップを築いています。EA SPORTSはフットボール界において確立された価値ある存在であり、私たちの革新的なパートナーシップにより生まれるであろうすべてのものにエキサイトしています。ブンデスリーガと2. ブンデスリーガが、EA SPORTS FCに組み込まれるのが楽しみです」

欧州サッカー連盟(UEFA)マーケティング・ディレクター、ガイローレン・エプスタイン氏

「世界中のフットボールファンにサービスを提供するという共通のコミットメントにより、EA SPORTS FCとの継続的なパートナーシップが、みなさんの愛するクラブ大会をフィーチャーしたオーセンティックなゲーム経験を提供できることをとても楽しみにしています」

南米サッカー連盟(CONMEBOL)マーケティング&コマーシャル・ディレクター 、フアン・エミリオ・ロア氏

「デジタルの体験を通して、フットボールのファンをお気に入りのクラブや選手、大会、ファン仲間とつなげていくことは、フットボールの世界では最も重要なことです。私たちはEA SPORTS FCと連携して、世界中のファンのみなさんに没入感にあふれた体験を提供できることを嬉しく思います」

NIKEエグゼクティブ・バイス・プレジデント兼チーフ・マーケティング・オフィサー、ディルクヤン・ファンハーメレン氏

「スポーツ、ゲーム、カルチャーの交差点となる場所でアスリートにサービスを提供していくことで、EA SPORTSとの長期パートナーシップを継続、拡大できることをとても嬉しく思っています。EA SPORTSとのパートナーシップによりコミュニティがスポーツに携わり、そして楽しむ方法が確実に成長していくでしょう」

(C)©Electronic Arts ©EA Sports ©FIFA

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