伝記映画『エルヴィス』ついに公開
オースティン・バトラーとトム・ハンクス共演、バズ・ラーマン監督作『エルヴィス』が2022年7月1日より公開される。そのズバリなタイトル通り、かのエルヴィス・プレスリーの生涯、現代における“ロックンロール”の誕生から死までを描く伝記映画だ。
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劇中でも度々フォローされるが、もちろんロックの基礎は黒人音楽によって築かれたものだが、それをプレスリーは“セクシーでワイルド”に生まれ変わらせた。だからして彼は世界一のロックスターなのであり、永遠のセックスシンボルとしていまだ多くのファンを魅了し続けているのである。
本作でトム・ハンクスが演じるのは、プレスリーのマネージャーとなるトム・パーカー大佐。一時期はプレスリーの収入を半分も搾り取っていたことで知られるがめついおっさんで、彼を映画業界に強引に売り込んだり、後年には過酷なスケジュールを課してプレスリーを死に追いやった原因を作ったとも言われている。
プレスリーの伝記映画というのは、我々が考えるよりもハードルの高い作業だったに違いない。オーストラリア出身でショービジネスを多くテーマに描いてきたバズ・ラーマンだから実現できたのかもしれないが、アメリカ人にとってプレスリーはロックスター以上の存在であり、いまだ真偽の曖昧な部分も多いだけに、映画の評価も辛口になるだろう。
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脂の乗りきったコンサート映像満載『エルヴィス・オン・ツアー』
ドキュメンタリー/コンサート映画『エルヴィス・オン・ツアー』(1972年)は、ザ・ビートルズの登場などによって人気に陰りが見えはじめたと言われている1960年代半を経て、見事ステージにカムバックするが、ドラッグに溺れ再び凋落していく直前、1972年のツアー映像をメインに構成されている。『2001年宇宙の旅』(1968年)でお馴染み「ツァラトゥストラはかく語りき」をバックに入場し、そのまま激しいバンド演奏から歌唱に入っていく流れを見せる冒頭の流れがアツい。
「ラヴ・ミー・テンダー 」や「好きにならずにいられない」、「恋の大穴」、「シー・シー・ライダー」など有名曲目白押しのコンサート映像の合間には、バックステージの様子やファンとの交流、米CBSの伝説的音楽・トーク番組<エド・サリバン・ショー>出演時の有名な映像などを挿入。アメコミヒーローのスーツなんか地味に見えてくるくらいゴッテゴテの衣装を見ているだけでも楽しい。23歳で兵役に就いてクルーカットにされたときには、新聞に「エルヴィス、もみあげ剃られる」という見出しで報じられたそうだ。
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ファンとのキスなんて今では絶対に考えられないが、ファンの方からプレスリーにおねだりして、ステージ上から何人もの女性とキスしまくっている様子も衝撃的だ。いま見ると、こってりギラギラしたプレスリーの何がそんなに良かったのか理解に苦しむかもしれないが、のちに世界一売れたソロアーティストとしてギネス認定された、つまり現在のボーイバンドなどと違って推し/担当を一人で独占状態だったのだから、この異常な熱狂状態にも納得するしかない(?)。白目を剥きそうな勢いで狂喜乱舞するファンや、めそめそ泣きながら「10年間も彼と会えるのを待ってた」とカメラに訴えるファンの姿を見れば、その人気が本物だったことが分かるだろう。
プレスリーはモノマネ人口もおそらく世界最大級、最強のポップアイコンである。バトラーがどれだけプレスリーになりきっているか、このドキュメンタリーを観ておけば彼の熱演がより伝わってくるはずだ。
『エルヴィス・オン・ツアー』はBlu-ray/DVD発売中、CS映画専門チャンネル ムービープラス「特集:ロック・スターと共に!」で2022年6月放送
『エルヴィス』は2022年7月1日(金)より全国公開
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