このところサッカー界で移籍のために動かされるお金はうなぎのぼりとなっている。小さなクラブは選手を売ることに賭けた経営をすることも…。
今回は『Planet Football』から「この5年間でもっとも選手の売り買いによる赤字が多いクラブ」をご紹介する。
10位:アストン・ヴィラ
赤字:2億2124万ポンド(およそ367.3億円)
意外かもしれないが、この5年間に世界で最も支出が多くなったクラブの10位はアストン・ヴィラであった。2年間2部リーグに降格していたにもかかわらず、2019~2021年に多額の投資を行っていた。
タイロン・ミングス、ウェズレイ、オリヴァー・ワトキンス、エミリアーノ・ブエンディア、レオン・ベイリー、ダニー・イングスらはすべて2000万ポンドを超える移籍金で獲得されている。
驚くべきことにジャック・グリリッシュを1億ポンド以上の額で売却した上でこの数字なのだから恐れ入る。今夏もジエゴ・カルロスとフィリペ・コウチーニョを獲得しており、ジェラード監督には言い訳が出来ない環境が整ったといえよう。
9位:バルセロナ
赤字:2億2563万ポンド(およそ374.59億円)
バルセロナは2017年夏、ネイマールをパリ・サンジェルマンに売却したことで天文学的な移籍金2億ポンドを手に入れた。そして、彼らはなんとその額以上をすぐさま投資に持っていった。
ウスマヌ・デンベレ、フィリペ・コウチーニョ、そしてアントワーヌ・グリーズマン。彼らはすべて1億ポンド以上の額で獲得されており、そして誰も成功しなかった。
この5年間で9億ポンド以上を費やしており、もしネイマールやアルトゥール、パウリーニョらによる収入がなければどうなっていたか…。
8位:トッテナム・ホットスパー
赤字:2億3160万ポンド(およそ384.5億円)
トッテナムのダニエル・レヴィ会長は、厳しい目を持ってビジネスをすることで有名だ。選手を売ることに関してはとくにそうであり、ハリー・ケインやタングイ・エンドンベレらの交渉で高い移籍金をふっかけた。
そのため、このリストにある10クラブのうち、移籍金による収入はアストン・ヴィラより少し多いだけである。そのため5年間での支出は4億3000万ポンドであるが、赤字の額は膨らんでいる。
今夏はアントニオ・コンテ監督の下で迎える移籍マーケットになるため、かなり多くの移籍金の動きがあるように予測されているが…。果たして売るほうが多いか、買うほうが多いか。
7位:チェルシー
赤字:2億4056万ポンド(およそ399.38億円)
オーナーになってから、ロマン・アブラモヴィッチ氏は15億ポンド以上をクラブに投資してきた。この5年間でもロメル・ルカク、カイ・ハヴァーツ、ケパ・アリサバラガ、アルバロ・モラタ、クリスティアン・プリシッチを引き入れてきた。
幸運なことに、チェルシーにとってはエデン・アザールが1億ポンド以上で売れたこと、アントニオ・コンテに追い出されたジエゴ・コスタが5400万ポンドで売れたことがダメージを和らげた。これはディレクターのマリーナ・グラノフスカヤの功績だろう。
今夏アブラモヴィッチ氏がオーナーの座から降り、アメリカのスポーツビジネスマンが経営するようになったことで、どんな変化があるのだろうか。
6位:ユヴェントス
赤字:2億9181万ポンド(およそ484.46億円)
ユヴェントスはフリーエージェントになった選手を積極的に獲得し、移籍金を支払わない補強を好んでいる。アーロン・ラムジーやエムレ・ジャン、アドリアン・ラビオらはすべて移籍金ゼロで契約をまとめた選手だ。
しかしそれでも彼らが購入した選手だけでかなりの額になる。クリスティアーノ・ロナウド、ゴンサロ・イグアイン、マタイス・デ・リフト、ドゥシャン・ヴラホヴィッチら、5年間で8億5789万ポンドを費やした。
ただ、この2シーズンはイタリア・セリエAでの優位性を失っている状況で、これらのビジネスが理想的だったのかどうかはわからない。
5位:アーセナル
赤字:3億3473万ポンド(およそ555.72億円)
トップ4になかなか戻ることが出来ないアーセナル。その選手の取引についても、このところ契約を解除してフリーで放出するケースが多く、赤字がかさんでいる。
メスト・エジルとピエール=エメリク・オーバメヤングは高給取りになったとたんに調子を落とし、フリーで退団。アレクサンドル・ラカゼットもタダで去ることになった。7200万ポンドで買ったニコラ・ペペはまだなにもしていない。
冨安健洋やマルティン・ウーデゴールなど成功例も数多いが、まだチャンピオンズリーグ出場権を獲得できない状態が続いている。正しい軌道に乗っているのだろうか。
4位:ACミラン
赤字:3億4280万ポンド(およそ569.12億円)
アストン・ヴィラに次ぐ驚きかもしれない。ACミランがこの5年で最も大きな移籍金を支払ったのはレオナルド・ボヌッチで、それが3780万ポンドに過ぎなかったことを考えれば、意外なポジションだ。
しかし中国人オーナーのリー・ヨンホン氏やそれを引き継いだエリオット・マネージメントは、過去5年間で印象以上に選手を獲得してきた。マッティア・カルダラやクシシュトフ・ピョンテク、サム・カスティジェホなど。
ステファノ・ピオーリ監督やパオロ・マルディーニSDの下で事態を好転できたのは幸いだった。この5年間の投資の結果、今は本当に活気に満ちた若いチームを持っている。
3位:パリ・サンジェルマン
赤字:3億7512万ポンド(およそ622.77億円)
トップ3に入ってきたのがカタールの資本を獲得したパリ・サンジェルマン。この5年間はネイマールやキリアン・エムバペをはじめとした強烈なスターを獲得し、世界トップレベルのクラブとしての立場を確固たるものとした。
とはいえその一方でセルヒオ・ラモスやジョルジニオ・ワイナルドゥム、ジャンルイージ・ドンナルンマなどフリーでの獲得も多く、総合すればあまりにも多くの移籍金を支払っているわけではない。
ただその一方で選手を売ることに関してはあまり得意ではなく、クリストフェル・エンクンクなど価値が高まる選手を簡単に放出している。
2位:マンチェスター・シティ
赤字:4億2481万ポンド(およそ705.27億円)
パリ・サンジェルマンと同様に、UAEからの支援があるマンチェスター・シティ。この5年間でジャック・グリリッシュやルーベン・ディアス、リヤド・マフレズ、ジョアン・カンセロ、エメリク・ラポルトなど多くの選手を巨額で買ってきた。
ナタン・アケ、フェラン・トーレス、ダニーロあたりは成功を収めていないが、巨額の投資はかなり実を結んでいる。そして失敗しても比較的高値で売り抜けている。
そのため、これだけのお金を使っていても赤字のランキングでは2位となっている。
1位:マンチェスター・ユナイテッド
赤字:4億7904万ポンド(およそ795.3億円)
マンチェスター・シティと同じ街のライバルであるマンチェスター・ユナイテッド。こちらは5年間で5億ポンドに迫る赤字額を出しているが、あまり補強が当たっている雰囲気がない。
アーロン・ワン・ビサカやロメル・ルカク、フレッジ、そしてハリー・マグワイア。大枚を叩いて獲得したものの失敗した選手も多く、かといって高く売れた選手もあまりいない。
ただ、エド・ウッドワード氏が退任したことによって移籍のポリシーはこれから変わってくるかもしれない。この夏のマンチェスター・ユナイテッドには大きな注目が集まる。