高まる核使用危機 被爆地として不使用と廃絶を 長崎市が平和宣言文原案

平和宣言文の原案について意見を交わす委員ら=長崎市平野町、長崎原爆資料館

 長崎市は11日、田上富久市長が8月9日の平和祈念式典で読み上げる「平和宣言文」の原案を起草委員会の第2回会合で示した。ウクライナに侵攻したロシアの核兵器使用が現実味を帯びる中、被爆地として不使用と廃絶を強く訴える。被爆者の女性(故人)が過去、核廃絶を求めスピーチした内容も盛り込む方針。
 原案では現実の「戦争」と対比する形で、核使用を回避するために政治や市民社会が「平和」を追い求める必要性を強調。宣言は4年連続で「平和の文化」との表現を用いてきたが、今回はその意味合いをより具体的に示す。
 長崎純心大教授の荒木慎一郎委員は「ウクライナ侵攻で戦争がどのようなものか分かった中で、平和の文化を例示することは大事」と評価。核廃絶などを呼びかける相手について、活水高非常勤講師の草野十四朗委員は「独裁者や核保有国だけでなく、核保有を是認する国などにも対象を広げ、国際社会の問題点として際立たせたほうが効果的」と指摘した。
 原案は、米国の核兵器を日本に配備し共同運用する「核共有」論にも否定的に言及。Jリーグ理事の高田春奈委員は「小学生の頃に原爆について学び、核戦争が起きたらどうしようと思ったが、授業で非核三原則や憲法9条を学びほっとした。それを変えようとする状況は恐ろしい」と意見を述べた。
 初会合で委員側が提案した被爆者のスピーチも原案に盛り込んだ。委員長の田上市長は「『核兵器を二度と使ってはならない』という長崎のメッセージを代弁してもらうエピソードだ」と説明。被爆者の朝長万左男委員は「原爆による障害が現在まで続くことは核の非人道性の最たる部分」としてさらに強調するよう求めた。
 21~23日に開催される核兵器禁止条約第1回締約国会議や、8月の核拡散防止条約(NPT)再検討会議にも触れ、日本政府には核禁条約への署名、批准を求める。市は委員の意見や締約国会議の結果も踏まえ、7月9日の最終会合で修正案を示す。

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