レッドブル&HRC密着:フェラーリを上回るペースに自信。VSC中のステイアウトは「正しい判断」と代表&フェルスタッペン

 レッドブルが1-2フィニッシュを飾った2022年のF1第8戦アゼルバイジャンGP。果たして、フェラーリのシャルル・ルクレールがパワーユニットのトラブルでリタイアしていなかったら、どうなっていたのだろうか。

 ポイントとなったのは、9周目に出されたバーチャルセーフティカー(VSC)だ。ここで動いたのが、2番手を走行していたルクレールだった。VSC中にピットインすれば、通常約19秒となるピットストップロスが約10秒となるからだ。

 これに対して、レッドブルはトップを走行していたセルジオ・ペレスと3番手だったマックス・フェルスタッペンをステイアウトさせた。ペレスは「チームとうまくコミュニケーションが取れずにちょっと混乱してしまった」と語った。クリスチャン・ホーナー代表も「ピットインさせるかどうか、ギリギリのタイミングだった」と振り返る。

 その後、スタート時に履いていたミディアムタイヤのペースが落ちてきた16周目にペレスがピットインし、その2周後にフェルスタッペンがピットインすると、先にピットインしていたルクレールがトップに立ち、フェルスタッペンが12秒後方、ペレスは16秒後方のポジションとなった。

2022年F1第8戦アゼルバイジャンGP マックス・フェルスタッペン(レッドブル)

 それでも、ホーナーは「ステイアウトは正しい判断だった」と言う。その理由は「我々のほうがレースでは明らかにフェラーリよりも速かったから、ピットストップでギャンブルする必要がなかった」からだ。

 レース序盤、先頭を走っていたのはスタートでポールポジションのルクレールのインをついたペレスだった。しかし、フェルスタッペンは2番手のルクレールをなかなか抜けなかった。ただし、それは「チャールズ(ルクレール)がチェコのトウを使っていたため、マックスがDRSを使用しても追いつけなかった」(ホーナー)からで、単独で走行すれば、レッドブルのほうが速いという自信を持っていた。

 優勝したフェルスタッペンも、チームのピットストップ戦略は正しかったと支持する。

「(フェラーリ勢が)リタイアしたことはほんの少しラッキーだったかもしれないけど、それでも今日の僕らのマシンは本当に速かったから、チャールズがリタイアしていなくても、彼とのギャップを縮めることもできたはずだし、そうなればレース終盤は面白いバトルが始まっていただろうね」

 じつはレース序盤の時点で、レッドブルはフェラーリがレース後半にタイヤに厳しくなることを予測できていた。それは、トップを走るペレスがすでにリヤタイヤのデグラデーション(性能劣化)に苦しんでいることをデータで確認していたからだ。ところが、そのペレスとのギャップをなかなか縮められないのを見て、ルクレールも同じ症状を抱えているため、フェラーリが早めにピットインすることは折り込み済みだった。

 案の定、ステイアウトしたペレスもVSC解除後には「リヤタイヤのデグラデーションがひどくて、マックスを抑えることができなかった」と、ホームストレート上でフェルスタッペンにオーバーテイクを許した。このとき、「ノー・ファイト(争うな)」という無線がペレスへ飛んだため、チームオーダーがあったのではないかと思われたが、ホーナーは否定した。

決勝レースの15周目にフェルスタッペンがターン1でペレスをオーバーテイク

「レース前、お互いレースをしていてもいいが、その場合はきちんとスペースを与えることを確認していており、チームオーダーについては話はしていない。ただ、あの段階ではふたりのドライバーのペース差があまりにも大きかった。チェコはあの時点でリヤタイヤにかなり激しいグレイニングが発生していたしね。我々はここで2018年の苦い思い出がある(チームメイト同士で追突)。当時はチャンピオンシップ争いをしていなかったが、いまは違う。優先順位は対フェラーリであり、我々はポイントを最大化しなければならない。だから、注意を促したまでで、チェコもそのことは理解している。スペインGPとは状況が違う」

 そして、ホーナーはこう続けた。

「いまになって思えば、チェコは予選に重点を置きすぎて、結果的にレースではリヤタイヤが厳しくなってしまったのかもしれない」

 そして、それはペレスだけでなく、ポールポジションを獲得したルクレールにも当てはまっていたのではないかとホーナーは言いたかったのではないだろうか。それほど、日曜日のバクー・シティ・サーキットでフェルスタッペンは速く、強かった。

2022年F1第8戦アゼルバイジャンGP マックス・フェルスタッペン(レッドブル)

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