憲法内で日米役割変更せず、透明性確保と総理

 岸田文雄総理はアジア安全保障会議での基調講演で、日本の安全保障に対する考えを示した。「防衛費の相当な増額を図る」と表明したうえで、参加各国に「日本の平和国家としての在り方は不変と強調する」とし「我が国の取り組みは憲法・国際法の範囲内で、日米同盟の基本的役割分担を変更しない形で進めていく。各国にも引き続き透明性をもって、丁寧に説明していく」と防衛費増額に理解を求めた。

 自民党の高市早苗政調会長は12日、民放テレビ番組で防衛費が「必要なものを積み上げれば10兆円規模になる」と今年度予算のほぼ倍になるとの認識を示し、安倍晋三元総理はGDP比2%とさらに11兆円規模を示すなど、財源も「国債」に求める考えを明らかにしている。

 加えて自民、維新など改憲派が求める憲法9条(戦争の放棄)規定の改正。「憲法の範囲内」としながら、改憲をいい、集団的自衛権行使を一部で認める「解釈改憲」の下で制定された安保法制を見て「日米同盟の基本的役割分担を変更しない形」が維持されるのか。岸田総理は国内外に対し、透明性を持った説明努力を求められることになる。

 岸田総理は講演で「ウクライナは明日の東アジアかもしれない、という強い危機感を抱いている。我が国も国際社会と結束して強力な対露制裁やウクライナ支援に取り組んでいる。私は対話による安定した国際秩序の構築を追求します。しかし同時に、ルールを守らず、他国の平和と安全を武力や威嚇によって踏みにじる者が現れる事態には備えなければならない」と語った。

 岸田総理は「日本を取り巻く安全保障環境が一段と厳しさを増す中、本年末までに新たな国家安全保障戦略を策定する。日本の防衛力を5年以内に抜本的に強化し、その裏付けとなる防衛費の相当な増額を確保する決意だ」とした。

 その中で、岸田総理は「いわゆる『反撃能力』を含め、あらゆる選択肢を排除せず、国民の命と暮らしを守るために何が必要か、現実的に検討していく。皆様には日本の平和国家としての在り方は不変と強調します。我が国の取り組みは憲法・国際法の範囲内で、日米同盟の基本的役割分担を変更しない形で進めていきます。各国にも、引き続き、透明性をもって、丁寧に説明してまいります」と語った。この文言の厳守・完全継続履行こそ、国外・国民への約束といえよう。(編集担当:森高龍二)

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