「NISA」と「つみたてNISA」どちらを始めるべきか?それぞれの特徴と適した投資法

岸田首相が「資産所得倍増計画」を発表したことで、ますます注目が高まりそうなNISAですが、2種類ある「NISA」はどちらを始めるべきなのでしょうか?

それぞれ活用時の注意点も含め解説します。


2種類のNISAの特徴

NISAというのは、非課税で投資ができる特別な口座です。非課税期間が5年のNISAと20年のつみたてNISAがあります。いずれのNISAも口座は1年毎に切り替わっていきます。例えば2022年開設の口座にお金を入れられる期間は1年限りで、翌年には新しい口座が自動的に開設されます。

この特別な口座に入れられるお金は、NISAは年間120万円まで、つみたてNISAは年間40万円までです。もちろん上限いっぱいまで投資をする必要はなく、少額から始めることができます。口座内で購入した投資商品は、その口座の中で持ち続けます。NISAでは、5年以内に売却をして得た利益が非課税、つみたてNISAは20年以内に売却をして得た利益が非課税です。

NISAは、5年間の非課税期間が終了したら、ロールオーバーと言って翌年に開設される新しいNISA口座にその資金を移し入れることができます。実際には、口座内の投資商品を一旦売却し、新しい口座で買いなおします。従って、ロールオーバー後は、取得単価は新しい口座で買いなおした価格に変わります。ロールオーバーのメリットは、資産が120万円以上になっても全額を次の非課税枠に移し換えて運用を継続させられる点です。

一方つみたてNISAには、ロールオーバーという仕組みがありません。非課税期間終了後も運用を継続したい場合は課税口座に資金を移します。その際もつみたてNISAの口座内でいったん売却をして課税口座で買いなおすので、取得単価が変わります。その後課税対象となるのは、新しい取得単価から増えた分です。

NISAで株式投資をする場合の注意点

つみたてNISAでは株式投資ができないので、株を買いたい場合は、選択肢はNISA一択です。つみたてNISAと異なりNISA口座では、一括で株を買うこともできます。しかしNISAは年間120万円までしか投資ができないので、買いたい銘柄を十分買えるのかを考える必要があります。

株の売買単位は100株です。銘柄によってはNISA口座で100株買えず単元未満で購入するケースもでてくるかも知れません。すると株主優待は受けられないので、それを目的としていた方にとってはNISAを選んだことがデメリットになります。また単元未満で株の取引きができる証券会社は限られているので、事前に確認が必要です。

また非課税期間終了後に運用をどうするのか、あらかじめ心づもりが必要です。ロールオーバーも可能ですが、これはその分新規の投資枠を消費してしまうことになりますので、できるだけ投資に回す資金を増やしたいという人には不向きです。ロールオーバーを利用しても最大非課税期間は10年ですし、2028年以降制度が継続するかどうか決まっていない点は注意が必要です。

投資信託ならつみたてNISA

長期で投資信託の積立を行いたいのであれば、使うべき口座はつみたてNISAです。選べる投資信託も、金融庁が定めた基準を満たした投資信託のみとなっているので、安心感があります。

ただし、つみたてNISAをする場合の金融機関選びは慎重に行いましょう。金融庁が認めた投資信託は200本程度ありますが、すべての金融機関で全商品を扱っているわけではありません。選んだ金融機関によっては、扱う本数が少ないところも多く、思っていた商品が買えないという恐れもあります。

つみたてNISAは2018年にスタートして以来、対象投資信託は徐々に増えています。特にインデックス型の投資信託は、信託報酬が引き下げられた商品が加わっています。もちろん投資信託の評価は信託報酬だけでは決められませんが、同じ種類の投資信託で0.4%も信託報酬に開きがあるのは見逃せません。すると、対象投資信託を多数扱っている金融機関の方が、選択肢が豊富で良いのではないでしょうか?

つみたてNISAで購入した投資信託は、できるだけ非課税期間をフルに使って運用を継続するのが理想です。2022年に購入した投資信託は20年保有を続け2041年に売却する、2023年に購入した投資信託はまた20年保有を続け2042年に売却するといったイメージです。

年間投資枠が40万円のつみたてNISAは、フルに活用ならば単純計算だと月3.3万円を積み立てることになります。そうなるとあまりたくさんの銘柄を組み合わせてポートフォリオを組むのは難しいかも知れません。また口座内で投資信託を売買することもできないので、組んだポートフォリオのメンテナンスとしてリバランスを掛けることもできません。すると選ぶべき投資信託は、20年間ほったらかしでも成長が期待できるものと言えます。

上記条件で考えるとつみたてNISAには、単独指数に投資をする投資信託よりも、複数の市場に投資をするバランスファンドの方が使い勝手が良さそうです。例えばいま好況なA市場が20年間変わらず活況とは限りません。でもA、B、C、D市場に投資をするバランスファンドであれば、Aの市場の調子が悪くともB、C、Dが好況であれば値段は落ちにくいでしょう。さらに、A、B、C、Dの投資配分が固定されているものより、状況をみながら投資配分が変更されるものの方がつみたてNISAでは扱いやすいかも知れません。

課税口座も利用する

結論として、NISAを利用する場合は、まずどのような投資をしたいのかを考えた上で、NISA口座がその受け皿として適切かどうかを判断しましょう。投資枠が大きいから、株を買いたいからと安易に考えていると、思ったような投資がしにくいかもしれません。

もっと株式投資を自由に積極的に行いたい場合は、課税口座を利用しましょう。最近はとかく課税口座を嫌う風潮がありますが、非課税の枠にとらわれず投資をした方がメリットがある、という方も少なくないでしょう。

つみたてNISAは、ひとつの商品で複数の市場に分散投資が可能なバランスファンドの方が長期の非課税期間を有効に使えるかも知れません。世界の経済成長の恩恵を受ける、世界の経済状況の変化に連動できるような商品が理想です。

それでも、場合によっては単一の市場に投資をしたい、あるいは単一の市場に投資をする投資信託を自由に組み合わせて自分でポートフォリオを組みたいということもあるでしょう。その場合はiDeCoを活用します。iDeCoの口座は投資信託を自由に売買することが可能ですから、つみたてNISAとは違った戦略で投資をすることが可能です。


NISAなのかつみたてNISAなのかという選択肢に縛られず、課税口座やiDeCoも活用できれば、資産形成の選択肢がどんどん拡大していきます。ぜひ視野を広げてみましょう。

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