令和版所得倍増は総裁選に勝つためだったのか

 岸田文雄総理が13日の参議院決算委員会で「令和版所得倍増は去年の衆議院選挙向けのスローガン、あるいは自民党総裁選挙に勝つためのスローガンだったのか」と追及され、「分配」について質されたが、金融所得課税の見直しには具体的な目途さえ示せず「1億円の壁という部分について考えていくべきと申し上げている」と苦しい答弁に終わった。

 質したのは立憲民主党の杉尾秀哉議員。杉尾議員は政府が閣議決定した「骨太の方針」に触れ「分配についての具体的記述がない」と指摘。また「令和版所得倍増計画に至っては影も形もない。代わりに『資産所得倍増プラン』が入る。『令和版所得倍増』は去年の衆議院選挙向けのスローガン、あるいは自民党総裁選挙に勝つためのスローガンだったのか」と追及した。

 岸田総理は「私は最初から成長も分配もということを言っている。『資産所得倍増』は国民の所得を増やし、消費に回すためには2000兆円の金融資産のうち、1000兆円の預貯金を活用することによって可処分所得を増やす、こうした手立ても併せて行うことで消費を喚起し、次の成長へつなげる、様々な政策の一つとして用意した」と強弁。

 しかし投資である以上、倍増どころか、元本割れするリスクも高いことはいうまでもない。貯蓄が金融市場へ回され確実に収益を上げるのは手数料で稼ぐ証券会社と金融機関。加えて、将来不安が残る社会保障制度の下ではリスクのある投資に回す人もそうはいない。

 杉尾議員も世論調査の結果を取り上げ「貯蓄を投資に回そうと思う23%、思わない40%、そもそも投資に回す貯蓄がない34%。結局4人に3人が投資に否定的。積立NISA枠拡大とかだったら格差拡大になる。格差を縮小するのじゃなかったのですか」と総理の発言と実態に整合性のない点を問題視した。

 岸田総理は「所得を引き上げるのと資産所得を引き上げる、この両方をセットにすることが大事ということを言っている」と答えたが、分配政策を考える時の「金融所得課税」の強化と逆の方向を向いていることは否定できない状況だ。

 それでも岸田総理は「金融所得課税については『1億円の壁』という部分について考えていくべきと申し上げている」とした。一方で金融所得課税見直しの具体的目途さえ示せなかった。

 杉尾議員は岸田総理に対し「アベノミクスを追随しているどころか、強化しようとしている」と政策を批判した。(編集担当:森高龍二)

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