スタートでの接触に異なる見解示すLMP2上位勢「ありえない動き」「1年分の努力が水の泡」/ル・マン24時間

 ユナイテッド・オートスポーツUSAとチームWRTは、2022年ル・マン24時間レースのスタート時に1コーナーで発生したアクシデントを、ともに悔やんでいる。

 予選でLMP2クラス2番手となったウィル・オーウェンがドライブするユナイテッド・オートスポーツUSA22号車オレカ07・ギブソンは、スタートで右側にいたクラスポールの31号車WRTのレネ・ラストと、左側に浮上してきていたリアルチーム・バイWRTの41号車のフェルディナンド・ハプスブルクに挟まれる形となり、コース左側のグラベルへと埋まった。

 このアクシデントによりラストの31号車には1分間のペナルティが与えられ、22号車はマシンにダメージを負うこととなり、過去にLMP2優勝を経験した実力者たちが上位争いから脱落した。

 彼らは1周目のドラマから完全には立ち直ることができず、LMP2のレースはJOTAの38号車が支配した。

 オーウェンは、スタート直後のラストの動きがアグレッシブであり、1コーナーに対して自身は31号車に並んで入っていく権利があった、と考えている。31号車はハイパーカー勢に次ぐ総合6番グリッドとして右列に、総合7番グリッドのオーウェンはその左後ろに位置していた。

「グリーンライトの瞬間、僕はラストと並んでいた」とオーウェン。

「(グリッド)列が違うから、スタートの瞬間は少し後ろにいた。でも、スタートはうまくいって、すぐに彼の横に並んだんだ」

「ミラーを見ると、青いクルマ(41号車ハプスブルク)が左に動いているのが見えた。彼はそっちに行ったんだ。それは見えていた」

「青いクルマは少しずつ近づいてきたけど、僕はそのギャップをなんとかしようと思った。そのとき突然、ラストは直線ではありえないほどアグレッシブに、左にステアリングを切ったんだ」

「正直に言えば、これが事故の原因だ。左の青いクルマにぶつかる前に、僕は充分に反応することができなかった。そして、そのままグラベルのなかに入ってしまった」

「クルマをもとに戻すのに、5分か6分かかってしまった。かなりの後退だったね」

■「22号車はスタートラインで前にいた」と訴えるWRT

 WRTのスポーツディレクター、ティエリー・タッサンは1周目の事故について、ラストを擁護した。

「グリッド2列目のマシン(22号車)は、(1列目の)レネ・ラストと並んでいた。(レース前の)レースディレクターのブリーフィングによれば、彼は本来、1列うしろにいなければならない」とタッサンは示唆した。

「2列目のマシンは、スタートラインを通過するまで、2列目にとどまるべきだ。22号車はスタートラインを通過したとき、ラストの前にいた」

「そしてレネが動いて接触し、ペナルティを受けた。彼は1分間のストップペナルティを受けたが、同時に41号車も突き飛ばされてしまい、パンクとリヤへのダメージを受けてしまった」

「41号車は周回おくれとなり、31号差はペナルティのせいで後退してしまった」

ポールポジションからスタートしたWRTの31号車(ショーン・ゲラエル/レネ・ラスト/ロビン・フラインス)

 31号車には(カウル以外の)メカニカルなダメージはなく、マシンは好調だったものの、序盤のペナルティから挽回するのは至難の業であったとタッサンは説明している。

 31号車は19時間目に入って、ロビン・フラインスのドライブ時にインディアナポリスでクラッシュし、レースを突然終えることとなった。

「スローゾーンは、本当に不運だった」とタッサン。

「38号車(JOTA)はスローゾーン導入前に通過し、我々がさしかかったところでアクシデントが起きたんだ。1分30秒だった差が2分になり、それが2分30秒になった。『もう無理だ』と思ったね」

「その後、多くの問題を抱えることになった。そして最後はクラッシュで大変なことになってしまった」

 2021年大会での優勝の防衛を狙ったWRTは、今回フラインスがクラス・ポールポジションを獲得していた。「スタートまではすべてがうまく行っていたんだ」とタッサンは付け加える。

「昨年は(最終ラップで逆転できて)ラッキーだった。でも、それがどれだけラッキーな勝ち方だったのか、分かっていなかったんだ」とタッサン。

「昨年は幸運だったが、今年はアンラッキーだった。フランス語では、『ドミノ効果』と言うんだ。スタートの事故がすべての複雑にしてしまった。細かいところで苦労していた。今日は僕らの日じゃなかったね」

■「チャンピオンシップは、もう終わりだ」とユナイテッド22号車陣営

 ユナイテッド陣営では、22号車がクラッシュから立ち直るのに時間がかかった一方で、姉妹車の23号車では、アレックス・リンが最初のスティントを好調に走り、トップ3へと食い込む勢いを見せた。

 だが、タイヤの剥離が発生するなどして、やがて序盤の勢いが一変してしまう。

 さらにアンセーフリリースやスローゾーンでのオーバーテイクによりドライブスルーペナルティを受け、最終的に23号車はクラス6位に終わっている。

クラス6位でフィニッシュしたユナイテッド・オートスポーツUSAの23号車

 一方、修復後の22号車はスローゾーンでのスピード違反によりドライブスルーを受けた。さらに20時間目に入ると、ミュルサンヌの出口で大きなタイヤかすがキルスイッチを直撃、パワーを失ったフィル・ハンソンはクルマを止めた。

「1年分の努力と準備が、1コーナーに到達する前に水の泡となってしまったのは悲劇だ」とハンソンは言う。

「それがレースだ、と言うところだろうが、そんなことは言えない。このレースは、皆に後味の悪さを残すだろう」

「(スタートの)ストレートで大きなダメージを受けたにも関わらず、いいペースを見せることができた」

「もう失うものは何もないので、次のモンツァではハードに戦うことを考えている。チャンピオンシップの数字という意味では、これでもう終わりだろうね」

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