障害ある受刑者と福祉つなぐ 長崎刑務所、南高愛隣会と委託契約 国の支援モデル事業

知的障害のある受刑者を対象としたモデル事業に取り組む長崎刑務所=諫早市小川町

 法務省は14日、長崎刑務所(諫早市)に九州内の刑事施設から知的障害者(疑い含む)約50人を集める処遇・支援モデル事業について、障害者福祉の専門的知見とノウハウがある社会福祉法人南高愛隣会(諫早市)と業務委託契約を結び、情報を共有し連携協力すると発表した。南高愛隣会の職員が刑務所に入り、刑務官らと処遇計画を立案し指導などに当たる。
 モデル事業は本年度から5年間。知的障害の特性に応じた処遇をして再犯防止を図り、出所し地元に帰住した後も福祉サービスに移行できる体制を構築する。事業の効果を検証した上で全国展開を検討している。
 法務省矯正局によると、2020年度に実施した特別調査で、全国に知的障害のある受刑者(疑い含む)は1345人。そのうち療育手帳を取得しているのは414人(30.8%)だった。こうした受刑者は再犯に至るまでの期間が短く、入所回数が多い傾向にあり、受刑中に必要な支援がないまま出所した場合、短期間での再犯が懸念される。
 モデル事業は、全国唯一の「社会復帰支援部門」を設けている長崎刑務所で、罪を繰り返す「累犯障害者」の支援に取り組んできた南高愛隣会と業務委託契約を結び、新たな処遇と支援を模索する。
 具体的には(1)特性に応じた刑務作業・訓練・指導を選定して支援する処遇計画を立案(2)計画に基づいた訓練・指導(3)在所中に療育手帳の取得に向けた調整(4)息の長い寄り添い型支援を可能にする調整-を進める。
 訓練・指導では、就労を見据えて、知的障害者を多く雇用している企業の協力を得た作業を導入。社会生活に向けて必要な知識の習得と、出所後に福祉サービスを受けるため療育手帳や福祉制度への理解を促進する。就労の支援については、一般就労が可能な対象者は就労支援、一般就労と福祉的支援のはざまにある対象者には福祉的就労などを用意する。出所してそれぞれの地元に帰住した後も支援を可能にするため、刑務所内外が包括的に連携することを目指す。
 法務省矯正局の担当者は「知的障害を有し短い期間で再犯を繰り返す人は、うまく福祉につながっていない。セーフティーネットからこぼれ落ちた人に、社会に戻って生活してほしいというのが目的。再犯防止につながれば」と話した。


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