高級食パンに最適「もち小麦」まもなく初収獲、滋賀・近江八幡 浸透が課題

初収獲を目前に控え、黄金色に輝く「もち小麦」の畑=滋賀県近江八幡市

 もっちりとした食感を生み出し、高級食パンなどに使われる「もち小麦」が、滋賀県内で初めて作付けされた近江八幡市野村町の畑で黄金色に実り、今月下旬に初収穫を迎える。関係者らが、生産量の拡大や新たな商品開発による地域の活性化を目指している。

 もち小麦は、もち性のデンプンを含む小麦で、同市内で作付けされた「もち姫」は、従来の品種と比べてよりつるつるとした口当たりが特徴という。高齢者ら介護食への活用などが期待されている。

 同市野村町の「近江園田ふぁーむ」の畑では、約15ヘクタールに黄金色のもち小麦が実った。収穫量は、昨秋、種をまいた時の想定より多く、50~60トン程度を見込む。園田耕一会長(73)は「当初は栽培が難しいかと思っていたが、思ったより順調に育った。将来性のある農作物で、県内での栽培がもっと盛んになれば」と話す。今秋の種まきでは、作付面積を増やす予定という。

 収穫後は「平和製粉」(津市)が粉に仕上げる。同社には自家製麺のラーメン店からもち姫の問い合わせが増えているものの、生産量に限りがあるため、新規の販路を広げられない状況だという。樋口宗明社長(57)は「生産量が増えると、より多くの人に届けられる。それにより新たな活用法も見つかるのでは」と期待を寄せる。

 一方で、もち小麦は農家に浸透しておらず、これまでもち姫の栽培は全国で岩手や青森などで約300トン(約90ヘクタール)にとどまる。近江園田ふぁーむの栽培は、近畿圏で最大規模という。

 もち小麦の研究や商品開発に携わり、同ふぁーむの栽培を後押しした梅花女子大の藤田修三教授は「もち小麦を地元に定着させ、新たな商品の考案で人を呼び込み、地域の活性化につなげられたら」と話す。

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