子どもと過ごすために正社員からパートになった41歳妻「後悔してないけど今後のお金が不安」

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。
今回の相談者は、41歳、パートの女性。子どもと過ごす時間を増やすため、正社員を辞めてパートに転職した相談者。後悔はしていないものの、今後教育費が増えていくなかで不安を感じており、働き方や貯蓄の金額を見直すべきか悩んでいるといいます。FPの坂本綾子氏がお答えします。


これから教育費がかかっていく時期。老後も見据えたとき、月々の貯蓄額の目標を、具体的な額で設定したいと感じています。

子どもに寄り添いたくて正職員は退職をし、子どもといる時間が増えて充実し、間違っていなかったと思えています。ただ、やはり世帯収入が減った中で一生懸命管理をしていますが、将来に漠然とした不安があるのも事実です。教育費が嵩む前にパートを増やしたほうがよければ検討したいのですが、今だけの時間も大切にしたいと思っています。あとどのくらい世帯収入が必要か、求める生活レベルに応じてお答えが難しいと思いますが、いまの家計の管理では甘すぎるかどうかだけでも、参考にさせて頂ければ幸いです。

【相談者プロフィール】

・女性、41歳、医療系専門職パート ・夫:41歳、公務員(教員)

・子ども:2人(9歳、7歳)

・住居の形態:持ち家(戸建て、東京都)

・毎月の世帯の手取り金額:41〜45万円(妻4〜5万円、夫36〜38万円、児童手当2万円)

・年間の世帯の手取りボーナス額:160万円/年間(夫のみ)

・毎月の世帯の支出の目安:31万5,000円

【毎月の支出の内訳】

・住居費:9万4,000円

・食費:4万2,000円

・水道光熱費:1万8,000円

・教育費:4万円

・保険料:1万5,000円

・通信費:9,000円

・車両費:7,000円

・お小遣い:3万円(夫のみ)

・その他:6万円(交際費、レジャー費、医療費、理美容や衣類、固定資産税・自動車税などを月額にすると)

【資産状況】

・毎月の貯蓄額:7万円

・ボーナスからの年間貯蓄額:60万円

・現在の貯金総額(投資分は含まない):1,200万円

・現在の投資総額:250万円(iDeCo、つみたてNISA)

・現在の負債総額:4,000万円(住宅ローン:物件購入額4,400万円、借入額4,100万円、返済期間35年、残債31年)他の借入は無し

・老後資金:公的年金15〜20万円?

・退職金有:夫のみ2,000万円前後

坂本:「今後のご家族の生活も、経済的なゆとりも、あなた次第ですね」と言ったら、ますます迷ってしまいそうですか? 心の底で、それがわかっているから悩んでいるということはありませんか。判断の材料になることを、一つずつ確認していきましょう。

今後、子どもにかかるお金について

まずは夫の仕事と収入について。公務員(教師)ですから、民間企業への転職をしない限り定年まで安定した収入が見込めます。退職金や老後の年金も、それなりにもらえそうです。

次に2人のお子様の養育費と教育費です。性別がわかりませんが、男の子なら食べ盛りの時期には食費が増えますし、男女ともに成長するにつれて被服費やこずかいなども増えていきます。スマホを持たせる、お子さんによってはメガネやコンタクトレンズ、歯列矯正の費用がかかります。子どもの養育費を含めた世帯の生活費が今よりもだんだんと膨らんでいくことになります。

習い事や授業料などの教育費は、進路により違ってきますが、お子様は2人で2歳違いなので、教育費がかさむ時期が重なります。もし、中学から私立に進学する、私立大学の理系学部に進学する、浪人したり、大学院まで進んだり、留学したりするとなると、家計が厳しくなる時期が数年間、続きそうです。

住宅ローン返済のポイントは?

さらに、自宅の住宅ローンは残債4,000万円。ざっくり計算した現在の世帯の税込み年収の4倍超。残りの返済期間は31年で完済は72歳。国の政策として70歳まで働ける環境づくりが進められていますが、仮に働いたとしても、会社員や公務員の場合は60歳から70歳までの10年間の収入は、60歳までに比べて下がる可能性が高いのが現状です。いつ仕事を引退するかにもよりますが、できれば途中で繰り上げ返済をして返済期間を短縮するか、退職時に一括返済した方が老後の収支が安定します。

現状維持のケースからシミュレーション

さて、このような状況の中で、相談者さんの働き方をどうするか、ひいては世帯年収をどれくらい増やせばよいかということですね。

現状維持のケースから考えてみましょう。毎月の貯蓄は7万円、ボーナスからの貯蓄は60万円、年間では144万円です。子どもの成長にともなって増える生活費は、夫の収入の昇給分でまかなうとして、年間144万円の貯蓄を60歳になるまでの19年間続けることができれば、2,736万円になります。現在の貯蓄と投資の総額1,450万円、退職金の2,000万円を足すと60歳時点の資産は6,186万円です。ただし、途中で教育費の支出があります。中学・高校までは公立(生活費と併せて教育費もその年の収入から出して貯蓄の取り崩しはしない)、大学は私立文系で卒業後すぐに就職するなら、大学の教育費(受験料等を含む)を1人550万円として2人で1,100万円。これを差し引くと残りは約5,000万円です。60歳時の住宅ローンの残債は金利が不明のためわかりませんが仮に1,600万円として、これを貯蓄で一括返済すると残りは3,400万円になります。

60歳時に3,400万円の老後資金と住宅ローンが終わった自宅があるということです。ただし、お子様が希望する進路を実現するために教育費がもっとかかれば、60歳時の貯蓄残高は3,400万円よりも少なくなります。また、車の買い替えや住宅のリフォーム費用は考慮していません。水回りは10年程度をメドに、戸建なので屋根や外壁のメンテナンスも10年から15年程度をメドに必要になります。こういった費用を差し引くと、60歳時点での資産はもっと少なくなりそうです。あくまで仮定による概算ですが、2,000万円台といったところでしょうか。

現状維持の場合、老後はどうなる?

公的年金は15~20万円程度を予測されています。夫が公務員で、妻も以前は正社員だったことから、2人合わせた公的年金額は25万円前後から20万円台後半くらいはもらえる可能性があります。公的年金からも税金や社会保険料が天引きされるので手取りは85~90%程度です。住宅ローンが終わっていれば、子どもが自立した後の夫婦2人の生活なら、公的年金の手取りの範囲でなんとか収まるかもしれません。ただし、老後にどんな生活をするかによります。もし、生活費が公的年金で足りなくて貯蓄から取り崩しが必要な場合は、収支管理をしっかり行う必要があります。

公務員の夫の収入は安定していますが、逆に言えば大きく収入を増やすことはむずかしいので、現状維持の場合は、貯蓄のペースを維持することと、支出が増えすぎないようにコントロールすることが必須です。

つまり、妻の収入の増加が家計のゆとりにつながります。教育費をもう少しかけたい、老後の生活に余裕を持ちたいと思うなら、やはり収入を増やすことです。

扶養内でパートの時間を増やした場合は

パートの時間を今より増やす、ただし扶養の範囲内には納めるケースを考えてみましょう。毎月3万3,000円、年間では40万円妻の収入が増えた(世帯収入も40万円増加)としましょう。60歳までの累計では760万円になります。760万円の経済的なゆとりを取るか、子どもとの時間を重視するかですが、ご自身の気持ちや考えだけで判断するのではなく、ご家族の率直な気持ちを聞いてみることも大事ではないでしょうか? 妻が仕事の時間を増やすには、夫に家事・育児の分担を増やしてもらう必要がありますし、お子さんたちが、お母さんが外で働く時間が増えることについてどう思うのかも、聞いてみてはいかがでしょうか。

仕事を増やすなら、働き方を今後どうしていくべきか

仕事は医療系専門職とのことですので、パートの時間を増やしたい、さらには正社員として仕事に復帰したいと思ったときも、有利に働きそうですね。

子どもが小学生の間は、親子で外出したり、一緒に過ごしたりすることがもっともスムーズで楽しい時期です。今、そしてこれからの数年間がまさにその期間ですから大事にしたいですよね。中学生以上になると、親とは一緒に外出したくない、友達と一緒の方がいいなど、子どもによっては思春期特有の反抗心や自立心が生まれてきます。一方で、養育費・教育費は次第に増えていきます。

子どもの成長にともなって、自分の時間や仕事の時間を増やしていくことを検討してはいかがでしょうか。将来、正社員など扶養の範囲を超えて働くことになれば、世帯収入はさらに増加して、教育や生活の選択肢も広がります。2人のお子さんが中学生と高校生になる6年後に正社員に復帰し、少なめに見積もって年収240万円程度のケースを考えてみましょう。手取りが200万円程度で今よりも140万円妻の年収が増える(世帯年収も同)と、60歳までの13年では1,820万円になります。

増えた収入は、半分程度を支出に、残りは貯蓄に回すと安定すると思いますが、どれくらいの比率にするかは状況に合わせて判断してください。

子どもが独立した後の老後も、寿命が伸びた現在ではとても長くなります。そういったことも考えての今回のご相談ですね。現状維持のケースで紹介した通り、貯蓄のぺースは今の状況を維持することが必須です。その上で、ご自身の気持ちと、ご家族の状況に合わせて選択するのがよさそうです。

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